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□春待ち風 《完》
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「宮村!!」
空から視線を外して声のした方を見ると今日の約束の相手、松川健吾が笑顔で大きく手を振りながら早足で近づいて来た。
相変わらず真っ黒に日焼けしている。
どうやったら冬にあんなにやけるんだろう?
そんなことを考えながら健吾にヒラヒラと手を振る。
「おまたせ」
おそいよ、とわざと口をとがらせながらベンチから立ち上がる。
健吾は高校2年と3年で同じクラスで塾が一緒だったことからすごく仲良くなった。
大学に入ってからも頻繁に会っており、健吾の家に泊まりに行ったことも何度もある。
恋愛感情なしで付き合える純粋な男友達。
これまで何度も助けられてきた。
ほんとに感謝している。
「とりあえず、行こうか」
健吾に頷いて歩き出した。