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□不動産屋さんの恋。U
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Ammasoの扉を開くと、カウンターに座っている牧さんが振りかえった。


「お、梨佳ちゃん!いらっしゃい」

「こんにちは」


カウンター席に座ると、牧さんがコーヒーをくれた。

「今日は春樹とデート?」



「ち、違いますよ!デートなんかじゃ…」



ご飯食べに行くだけです、と付け加えると牧さんは



「それをデートって言うんだよ」



ってニヤニヤ笑う。



否定しながらも、喜んでしまう自分がいる。




デート…って松岡さんも思ってるのかな?



そうだったら嬉しいな…。


窓に映る精一杯おしゃれして来た自分の姿。


終業時間になるとメイク室に駆け込んで、これまでにないくらい丁寧にメイクしてきた。


髪も派手過ぎないように気をつけながら巻いて。






…可愛いって思ってもらえるかな?




「あ、春樹」



牧さんが入り口を見ながらいきなり言うから慌ててカップを落としそうになりながら、立ち上がる。



けど、全くドアが動く気配はない。



「……………」




「あはは!!梨佳ちゃん慌てすぎ!」


爆笑する牧さんにからかわれたってことに気づく。



「ま、牧さん!!もう!」



恥ずかしさに顔が真っ赤なっていく。


は、恥ずかしい………。







「春樹は愛されてるねー」



「あ、愛!?つ、付き合ってないですよ!?」



「え?そうなの?もう付き合ってるかと思ってた」


牧さんがあまりにもさらりと言うから心臓がバクバク音を立てる。


黙りこんでしまった私の肩を牧さんがポンと叩いた。



「春樹がね、ここに女の子連れてきたの初めてだったんだよね。

いっつも連れて来いって言ってもまた今度の一点張りで。



…ある女の子を見つけるまでは絶対連れて来ないって言ってね」



「ある女の子?」





「まぁ、これ以上言うと俺怒られちゃうから、春樹から直接聞いてよ」



そう言って牧さんはにっこり笑う。
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