□BLdream

□捻くれた御伽噺1
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ある貧しい町に、一軒だけ豪華な建物が建っていました。
その家に住んでいる男は、本当に何でもない普通の人。

毎日何もしないで無駄に時間を過ごしていました。

そんな男の夢に、神々しい光を纏った何かが現れました。
あまりの神々しさに姿さえも確認できません。

「貴方は何ですか?何故私の夢に出てきたのですか?」

男はそう聞きながら其れの正体を見極めようと思いましたが
其れをしようとすると目が潰れんばかりに痛くなってしまいます。

"今の貴方に私の姿が見えるとお思いですか?"
"そう思っているのなら、貴方は何て傲慢なのでしょう"

心の中に響くような美しい声は女の物とも男の物とも区別が付きません。
そしていくつも違う声が重なりあっているの様に聞こえます。

「そんな事は思っていません。しかし貴方が誰なのか知りたいのです」

"今の貴方には天国の門を抜ける資格がありません"
"このままでは天国の門が永遠に閉ざされてしまいます"
"100の善行を行えば貴方に救いの道を用意いたしましょう"
"時間は少ない。今から行きなさい。この道を"



神々しい物体の指をさす方に首をめぐらせると一本の暗い道。

男が何も考えずに進むと其処は真っ暗な森の中。

振り返っても何もない。

神々しい物体も見当たらない。

仕方なしに彼は前に進むことを決めました。




少し進むと女の子に出会いました。
男はどうしたのかと尋ねました。

「母とはぐれてしまった」

そう言ったので、暗い森の中女の子を背負いながら歩いて歩いて歩いていきました。

やがて足の皮が剥け、血が噴出し始めた頃に母親が見つかりました。

二人はお礼を言って森の中へと消えていきました。



また少し進むと今度は老人に出会いました。
男はどうしたのかと尋ねました。

「妻の形見のペンダントを落としてしまった」

そう言ったので、何も見えない森の中土の上を這いずり回りながら探しました。

やがて指の爪が折れ、血が滲み始めた頃にペンダントは見つかりました。

老人はお礼を言って森の中へと消えていきました。



さらに進むと少年に出会いました。
男はどうしたのかと尋ねました。

「高い木に風船が引っかかってしまった」

そう言ったので、高い木を見上げ上に上に上っていきました。

やがて息が切れて、胸の辺りが痛くなった頃に風船に手が届きました。

少年はお礼を言って森の中へと消えていきました。






そんな事が92回ありました。
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