銀魂

□あの日あの時あの場所で
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あの日あの時あの場所で
       銀時編




仲間と天人の屍が折り重なる戦場で、俺はその知らせを聞いた。

“幕府が天人に降伏した”


別に驚きゃしなかった。
強いモノに巻かれた方が得策だとお上が判断した。

ただ、それだけの事。


知らせに嘆く者、国の復興にいきり立つ者。
そんな連中を尻目に、俺は屍が転がる戦場をフラリと離れ、どこへともなく足を向けた。

だんだん足が重くなってくる。さっきまで休みなく斬り合いしてたんだから当然か。腹も減った。朝から何も食ってない。

おまけに雪まで降ってやがる。最悪だ。
しかしその寒さのお陰か、血塗れでフラつく男を気に留める人影は無い。


体が限界に近づいた時、無意識に辿り着いていたのは町外れの墓地。

その中にある、ひとつの墓の裏に座り込む。
ちょっくら失礼しますよ、そう墓の主人に断りを入れて。



極度の疲労のせいか、眠くなってきた気がする。あれ、寒いトコで寝るのってヤバイんじゃなかったっけ。
どーでもいいか。


うとうとし始めた頃、背後から女の声が聞こえた。声の具合からいって、ババアに分類される年令だろう。

ばーさんの独り言が途切れ途切れに、別に聞きたかないが耳に入ってくる。

全部聞き流すつもりが、

「お供え物、置いとくよ」

この言葉につい反応した。
おーい、ババア。




饅頭食い終わって墓の裏から這い出てきた俺を見て、ババアは一瞬目を丸くしたが、特に何も聞いてこなかった。
それどころか、家賃払うなら2階に住まわしてやるだと。

見た目は妖怪のクセに大層なお人好しだな。
心の中でつぶやいたつもりが、口に出していたらしく、墓石に頭を叩きつけられた。オイオイ、これテメーの旦那の墓だろ。大事にしてやれクソババー。



そんなこんなで、のらりくらりと始めた万事屋稼業。
ひとりでダラダラやってくつもりが、いつの間にやら従業員が増えていた。

小言の多いメガネに、大食らいの小娘に、馬鹿デカイ犬。
銀サンこんなに大勢養えねーぞ。
ろくに給料も貰えねーのによくこんなトコいるなーなんて不思議に思う。
付いてきてーんなら手ぐらい引いてやるけどな。

まぁ何にせよ、一度抱え込んだモンを落とす気はさらさら無い。

二度とな。



あの日、あの時、あの場所で。

新しい俺が産声をあげた。






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