銀魂

□節約
1ページ/1ページ


シャキ、シャキン


目を閉じたまま鋏の小気味良い音を聞く。

「銀さんてホント器用ですね」

「まーな」

「はは、否定しないんだ」



髪が伸びたな、とちょっとだけ気になっていた。
そのうち安い床屋さんに行こうと思っていると、

「新八、その辺に新聞紙広げとけ」

「え、なんでですか?」

「髪、うぜーんだろ?切ってやっから」

ひょい、と現れた銀さんの手には鋏とバスタオル。

「え…銀さん、人の髪なんて切れるんですか?」

「銀さんはやる気が出れば、大概のことはできるんですぅ。それにほれ、節約になるだろ」

「う…すっごい不安だけど…節約…節約か…」






「まったく、完全に主婦の思考回路だよな」

「言い出したのは銀さんでしょ。それに床屋代だってバカにならないんだからいいんです」

おかしな髪型にされなければ。

『全体的に短くするだけ』と念を押して取り掛かってもらうと、さすが、としか言いようは無く。

「いいなぁ、器用な人って。僕不器用だから」

「このくれーなら慣れだろ。誰でも出来るって」

「嫌味ですか」

「ちげーよ。ほら、前髪やるから目ぇつぶれ」

「あ、はい」

きゅ、と目をつぶると、移動してきた銀さんに前髪を軽く触られる。

「……」

「………銀さん?」

「ん、ああ」

妙な間の後、ようやく鋏を動かし始める。
パラパラと落ちる髪の毛の感触をくすぐったく感じていると、ぴたっと鋏の音が止む。

「終わりました?」

「んー、顔に付いたの払うからまだ開けんなよ」

「はぁ」

目元や鼻を布でぐいぐいと拭われる。
やっと顔から離れたかと思うと、

「、ん?」

なにか柔らかいものが唇に触れた。
ぱち、と目を開けると見慣れた銀髪が目の前に広がっていて。

「ふっ…んん、ちょ、何やって…!」

「散髪代」

「はぁ?」

「金払えとは言わねーが、お代はもらわねーと。据え膳食わぬは男の恥とも言うしな」

「誰が据え膳だ!」

「だってよぉ、ちょこんと座って目ぇ閉じてじっとしてたらそりゃあ…」

「そ、それは仕方なくでしょーが!!」

「へーへー。いいから鏡見てこい。男前になってっから」

ばさ、とバスタオルを外される。


「もう…!」

ニヤニヤして…!

眼鏡をかけて、まだ感触の残る唇に触れる。


「…タダでやってもらったはずなのに」





(なんか高くついた気分だ…!)



20090713

配布期間
2009/8/13まで

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ