銀魂
□夏の終わりに
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「なにお前、自分が恋愛のてだれだとでも言いたいのか?」
ニヤニヤしながら尋ねると、新八の顔はメガネが曇りそうなほど瞬時に赤くなった。
「なっ…!そそんなこと言ってないでしょう!?」
「まっ、そうだわなぁ。お前も気付かないクチだったわけだし」
「…………っ!」
なんのことを言っているのか、新八はすぐに悟った。つまりアレだ。自分が銀時に想いを告げられた日のこと。弟ぐらいにしかみられていないと思っていた想い人に「好きだ」と言われて、嬉しさのあまり泣いてしまった日のことだ。
「あああ、あれはだって、仕方ないじゃないですか!お、とこ同士で…望みなんてあるわけないと思ってた、し……」
思い出した恥ずかしさか、人混みでこんな会話をしていたことに気付いた恥ずかしさか、新八の声はだんだんと小さくなっていった。
暗くて見えづらいが、新八は首まで真っ赤にして、少し拗ねたように顔はそっぽを向いている。
マズイ、いじめすぎた。
「…お、そろそろ打ち上げ始まるかな?」
まわりの観客たちがそわそわし始めた。皆一様に期待を込めた眼差しを暗い夜空に向けている。
うつむく黒髪をそっと撫でて教えてやると、意外にも簡単に顔を上げた。
陽気に鳴り響いていた祭り囃子も静まり、やがてその時を迎えた。
ひゅるるるる…
どん!!
花火特有の、やや遅れ気味の破裂音。夜空に咲いた大輪の花は次々と色や形を変えて群衆を沸かせた。
新八も例に漏れず、すっかり花火に釘付けになっていた。
「すごい…!綺麗ですねぇ」
「ああ」
ホウ、と溜め息をつきながら感動する新八に、銀時は小さないたずら心をくすぐられた。
次の花火が打ち上がる。
ひゅるるるる
「新八、」
「え?…ん……ッ!」
どん、という破裂音と、唇が重なった感触はほぼ同時。
いきなりの出来事にあっけに取られた新八だったが、すぐさま身を捩り抵抗を始めた。