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□悪戯
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「…っ、ふ、」
耳の淵を舌で辿る。ぴくぴく震える体がおもしろくて、わざとぴちゃ、と音を立てて舐め上げる。
「ん、んんっ」
「ふふ、音だけでも感じるの?」
「ちがっ、ぁあ!」
指で耳の穴をくすぐると、一際肩を揺らす。
耳、弱いんだなぁ。
にやにや笑っていると、
ふぅー
「っ!!!?」
急に耳に喰らった攻撃に、ぞく、と微量の電流が背筋を流れた。
「お返しです」
息を吹き掛けられた左耳を抑えて呆然としている俺に、この可愛らしい恋人はいたずらっこのような笑みを浮かべた。
「……」
俺の中で、何かが弾け飛んだ。たぶんそれは『理性』と言われるもの。
「冬樹くん、バンザーイ」
「え、バンザー…わぷ!」
一気に剥ぎ取ったTシャツを床に落とし、露になった柔らかい肌に舌を這わせる。
「ひゃっ!むっ、睦実さん?」
首筋を辿って鎖骨に軽く噛み付く。
「冬樹くんが煽ったんだよ?」
「え、そんなんじゃ…ひゃあんッ」
薄いけど柔らかい胸を啄みながら徐々に下降する。
淡いピンク色をした胸の先端に辿り着き、執拗に舐め回す。
「んゃ、あ、あぁっ」
時折柔らかく歯を立てて、もう片方もぎゅ、と摘みあげた。
「ゃ、ぅああ…!」
甘い声が頭の上から降ってくる。
強めの刺激を与えていると、無意識にか俺の頭を掻き抱いた。
「ふ、んぁ、あぁっ」
「…ん、はぁ…。あは、冬樹くん、そんなにココから離れてほしくないんだ?」
「えっ…や、ちがっ…ぁんん!」
ぴん、と粒を弾く。
「違うの?」
「ふぁ、も…いじわるっ…!」
力の入らない手で髪を握りこみながら潤んだ目で見つめられる。
朱を散らしたその表情はひどく扇情的で、思わずごくん、とのどが鳴った。
「…ごめん、冬樹くん」
いじめちゃって。
伸び上がってキスをすると、安心したように体から力が抜けて、両腕は首に絡み付いてきた。
「ん、んむ…」
「……ん、」
唇を重ねたまま、そろりと手を滑らせて短パンの中に忍び込むと、一際大きく身を跳ねさせて目を見開いた。
「ふ、んぅッ!んゃ…っむつ、…んン!!」
抗議は受け付けない、とばかりに唇を押し付けて舌を絡める。
ゆるゆると擦ると、すでに濡れていたそれはぴくぴく震えながら硬度を増してきた。
「ゃ、ぁん…はっ…」
息継ぎの合間に漏れる嬌声が鼓膜をくすぐる。甘い声に酔っていると、いきなり胸を叩かれた。
「ぷは…ッ、はぁ、は…いき、くるし…!」
「ああ、ごめんごめん。つい夢中になっちゃった」
荒い呼吸を落ち着けようと、冬樹くんは深呼吸を始めた。
(あんまり意味無いと思うんだけどな)
「ふぅ…、えっ、あ、やだッ…!」
両足を抱え上げて素早く下着と短パンを抜き取る。
「やっ、睦実さん…!あ、あん、ああぁ…ッ」
冬樹くんへの刺激で濡れた指を、露になった秘部へ突き入れる。
「ぅあ、あっ、あっ!」
異物感にギュッと寄せられた眉間にキスを落として、出し入れを繰り返す。
綻んできたそこに徐々に指を増やし、冬樹くんのイイ所を探る。
「ふあぁッ!んゃ、そこ、ダメぇ…!!」
「……っ」
背中をのけ反らせながら艶やかな声で啼く冬樹くんに、まだキツイかな、と思いながらも、自分にももう余裕なんて無い。
「…冬樹くん、挿入るよ…?」
「え、あ、待っ…!ぁあっんああぁ!!」
膝を抱え上げて強引に押し入る。
「く、ぅっ…」
「…ッ、あ、あっ!」
ぼろ、と零れた涙を吸い取って優しく髪を梳く。
「ごめん、冬樹くん…ゆっくり、するから…ね?」
「ふっ…、睦実さん、…あの、」
キス、してて下さい
「……」
「んっ、」
返事の代わりに唇を押し付ける。
何度も角度を変えて口の中を貪ると、冬樹くんの内股に、ぎゅ、と力がこもる。
動いても平気かな、と軽く腰を揺すると、体がビクつき絡み付いていた腕にも力がこめられた。
「…動くよ?」
「は、い…っ」
ギシギシと二人分の体重を支えるソファーが軋む。
こんなことをするにはさすがに狭いソファーから落ちないよう気をつけながらも、自分がどんどん溺れて行くのがわかった。
びくびく体を痙攣させながら、中がぐッ、と締まる。もうお互いに絶頂が近いみたいだ。
「…く、はぁっ、冬樹くん…っ」
「あっ、あっ、睦実さんッむつみさ…、もぉ…!」
腹に擦り付けられている冬樹くん自身を激しく扱き上げると、体を弓なりに反らせて白濁を零した。
「ぁああっ…!」
「……ッ!」
それに伴い更に締め付けられて、一拍ほど遅れて俺も達した。
「ふゆきくーん」
「……」
「ふーゆーきくーん。出てきてー」
「…知りません」
もぞ、と目の前のデカイ饅頭が動いた。
(弱ったな)
リビングでシた事と、ちょっといじめた事にどうやら拗ねてしまったらしい冬樹くんは、シーツに包まって壁の方を向いたまま出てこない。
「…ね、お願いだから顔見せて?」
冬樹くんに嫌われたら、俺生きて行けないよ。なんでもするからこっち向いて
シーツごと抱きしめて呟くと、…大袈裟ですよ。と、赤い顔をちょっとだけ覗かせた冬樹くんと目が合った。
「…のど、渇いたんですけど…」
「わかった!すぐ持ってくるよ。オレンジジュースでいい?」
コクン、と頷いたのを確認した後、ぎゅぅ、と強めに抱きしめて立ち上がりキッチンへ急いだ。
こぽこぽとグラスに注ぎながら、どうやって冬樹くんのご機嫌を取ろうかと考える。
(たぶんあれは照れてるだけだ。素直に謝れば、きっと許してくれる。そしたら、)
また抱きしめてキスして。そうだ、ひとつ言っとかないと。
大袈裟なんかじゃないよってね。
「ふふ、」
恋人の待つ部屋への足取りは、驚くほど軽かった。
終
20090509