小説1

□合宿*前編*(秋直×みなさん)
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「この間、通りで二人のこと見たよー!」

フクナガが秋山と直に話しかける。
エリーが主催する集まりについては、秋山は半ばあきらめて参加していた。
直がうれしそうにするし、かといって、一人では行かせられない。
秋山はフクナガのテンションの高さに眉をしかめながらも、しぶしぶそちらを見る。

「秋山さあ、あんな人通りの多いところで、ドロップの口移しはどうかと思うよ」

秋山を困らせようとしたフクナガの目論見は成功しなかった。
直が「フクナガさん、見てたんですか!」と固まっている一方で、秋山は平然としている。

「ああ、あの時か。おまえもいたな」

秋山は事も無げにそう言った。

「気づいてたのかよ!!」
フクナガがのけ反る。

「おまえ、自分がどれくらい目立つか、少しは自覚しろ」

「気づいてたなら、声かけろよ!!!
じゃなくて!!知ってて何てことしてんだ!!」

「何で俺がわざわざ通りの向こう側の店の中まで行って、おまえに声をかけないといけないんだ?」

フクナガを秋山が軽く心理的に抑えつけていると、やっと動けるようになった直がおろおろと秋山に話しかけた。

「おまえも、って、フクナガさんの他にも誰かいたんですか?」

「直前に、おまえをゼミ合宿に誘ってきた同級生に会っただろ」

「えっ?!あの、彼も見てたんですか?」

「ああ」

秋山さん、知っててわざとしたんですか?!
と直が頬を膨らませる。

「俺にあんなことされるのは、いやだったのか?」
秋山はわざと悲しそうな顔をしてみせる。

「そんな!いやなわけありません!」
秋山が悲しそうにしたので、途端に直は必死で否定した。

「なら、いいだろ」

悲しそうな顔はどこへ行ったのか、秋山は余裕な表情に戻ると言い切った。
秋山に無理やり納得させられた直だったが、何かを思い出して、あ!とうれしそうな顔をした。

「その時、秋山さんと私、兄妹に間違われたんですよ」

秋山さんに似てるなんて、何かうれしいです、と言う直を見ながら、フクナガは理解した。自分の分析が当たっていたことを。

直ちゃんに気のあるそぶりの学生に、「お兄さんですか?」などと言われた秋山が、顔色ひとつ変えずに内心ムッとしている様子が目に浮かぶ。
きっとあの勝ち誇った顔で、直ちゃんが誰のものか見せつけたんだな・・・。

秋山をたまには負かそうとしたが、失敗に終わったので、フクナガは向きを変えた。
腹いせに、エリー、ヨコヤ、葛城、仙道、久慈にあらいざらいぶちまける。

「もう、甘ったるすぎて、店を出てからも体中の毛穴から砂糖がザラザラこぼれてたんだぞ!」

直がええっ?!と心配そうにフクナガの体を見るのをみんなほほ笑ましく無視した。

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