ヘタリア短編&リクエスト小説

□Happy Christmas to you.
1ページ/14ページ

寒い。

 今は凍り付きそうな程冷たい真冬。
 アメリカ合衆国なんてところに生まれた俺、アルフレッド・F・ジョーンズは、毎年冷え切ったこの季節に寒くて死にそうになる。ここの冬は何回訪れてきても慣れないものだ。

「うぅ、さぶい。おっと危ない。」

 寒くて震える中、気を紛らわせようとして家でテレビゲームをしていた。
 このゲームは友人の本田菊という人から貰ったもので、あの有名な赤い帽子と髭男が出てくるやつだ。これがなかなかはまるんだな。
 胡座をかいている足に両肘をついてコントローラーを持ち、ゲームを進めていた。そのままの体勢でしばらくやっていたものだから、多少下にひいている足が痺れてはいる。
 しかし、そんなことよりゲームが面白くて、気にする気にはなれなかった。
 ふと窓から外を見ようと思いつき、視線を画面からそらしたが、部屋と外との温度差があり、水蒸気で曇ってよく見えなかった。
 外の景色は白くて、白銀の細かい粒が輝きながらはらはらと落ちていく事から、雪が降っていることは分かる。それでいつもより寒かったのか。そんな事を思いながら、またゲームに集中する。
 これを始める前から寒いと感じていたので、暖房器具を全て使用していたが、雪が降っていたせいで一向に家の中の空気は暖かくならなかった。北の方にある国だから、冬の気温がとても低いのである。
 しばらくゲームを続けていたが、やはり見てみたいという好奇心から外が気になった俺は、テレビ画面にメニュー表示をさせて一旦ゲームを一時停止状態にした。
 コントローラーを放り投げて、勢い良く立ち上がる。冷えた手に優しく息をかけ、指を胸の前でさすって暖めながら窓辺へ小走りで向かった。
 窓辺につくと同時に、窓の中央に両掌をゆっくりとのせる。
 予想外にひんやりとして冷たく、暖めたばかりの手がまた冷えていく。その指を中央から両端へと滑らせると、たらりたらりと水滴がガラスをつたって流れていった。
 大雑把に水滴を掌で拭き取り、窓の向こうから現れた景色。それは、既に白銀の世界へと姿を変えた自分の家の庭だった。
 感動した俺は目を輝かせてその景色を眺める。

「雪が積もってるなんて、全然気付かなかったぞ。今年初めてなんじゃないか。凄く、綺麗だ…。」

なんて独り言を呟いた。
 その景色に見入ってぼんやりとしていると、ふとゲームの事を思い出してテレビの方を振り返る。画面は、まだメニューを表示したまま光を放っていた。

「外は寒すぎるから出たくないし、さっさとゲームを終わらせてしまおう。」

 もう一度その雪景色を眺めて目にしっかりと焼き付けた後、もとの場所にスタスタと戻ってまた胡座で座り、コントローラーを握った。

  ◇

 部屋の灯りが画面から跳ね返ってきて妙に眩しく、目がチカチカするなとは思いながらも、あれからかれこれ3時間くらいはゲームに没頭していた。
 カチカチというコントローラーを操作する音と、聞き慣れた効果音が部屋に響く。流石に目が疲れてきたな。
 こんなにぶっ通しでやることは多々ある。溜まっている自分の仕事なんか放っておいてそんな状態を続け、あっという間にもう一週間は経っている。毎回いい加減に仕事をしなければと思いつつも、ついついこのゲームを始めてしまう。駄目な自分だな。
 そして、とうとう最後のステージのボス戦までたどりついた。

「いやあ、長かったな〜。ここまで来るのは!」

 軽く伸びをして、ふう、と息を吐く。いつの間にか、視界がぼやけて画面の文字が見えづらくなっていて、目が疲れきっている事を訴える。
 ごしごしと目を擦り、失敗した時のために一度セーブをしておいた。さあいよいよラストステージだと意気込み、スタートのボタンを押す。

「ヒーローが助けにきたぞ。お姫様」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ