ヘタリア短編&リクエスト小説
□Happy Christmas to you.
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寒い。
今は凍り付きそうな程冷たい真冬。
アメリカ合衆国なんてところに生まれた俺、アルフレッド・F・ジョーンズは、毎年冷え切ったこの季節に寒くて死にそうになる。ここの冬は何回訪れてきても慣れないものだ。
「うぅ、さぶい。おっと危ない。」
寒くて震える中、気を紛らわせようとして家でテレビゲームをしていた。
このゲームは友人の本田菊という人から貰ったもので、あの有名な赤い帽子と髭男が出てくるやつだ。これがなかなかはまるんだな。
胡座をかいている足に両肘をついてコントローラーを持ち、ゲームを進めていた。そのままの体勢でしばらくやっていたものだから、多少下にひいている足が痺れてはいる。
しかし、そんなことよりゲームが面白くて、気にする気にはなれなかった。
ふと窓から外を見ようと思いつき、視線を画面からそらしたが、部屋と外との温度差があり、水蒸気で曇ってよく見えなかった。
外の景色は白くて、白銀の細かい粒が輝きながらはらはらと落ちていく事から、雪が降っていることは分かる。それでいつもより寒かったのか。そんな事を思いながら、またゲームに集中する。
これを始める前から寒いと感じていたので、暖房器具を全て使用していたが、雪が降っていたせいで一向に家の中の空気は暖かくならなかった。北の方にある国だから、冬の気温がとても低いのである。
しばらくゲームを続けていたが、やはり見てみたいという好奇心から外が気になった俺は、テレビ画面にメニュー表示をさせて一旦ゲームを一時停止状態にした。
コントローラーを放り投げて、勢い良く立ち上がる。冷えた手に優しく息をかけ、指を胸の前でさすって暖めながら窓辺へ小走りで向かった。
窓辺につくと同時に、窓の中央に両掌をゆっくりとのせる。
予想外にひんやりとして冷たく、暖めたばかりの手がまた冷えていく。その指を中央から両端へと滑らせると、たらりたらりと水滴がガラスをつたって流れていった。
大雑把に水滴を掌で拭き取り、窓の向こうから現れた景色。それは、既に白銀の世界へと姿を変えた自分の家の庭だった。
感動した俺は目を輝かせてその景色を眺める。
「雪が積もってるなんて、全然気付かなかったぞ。今年初めてなんじゃないか。凄く、綺麗だ…。」
なんて独り言を呟いた。
その景色に見入ってぼんやりとしていると、ふとゲームの事を思い出してテレビの方を振り返る。画面は、まだメニューを表示したまま光を放っていた。
「外は寒すぎるから出たくないし、さっさとゲームを終わらせてしまおう。」
もう一度その雪景色を眺めて目にしっかりと焼き付けた後、もとの場所にスタスタと戻ってまた胡座で座り、コントローラーを握った。
◇
部屋の灯りが画面から跳ね返ってきて妙に眩しく、目がチカチカするなとは思いながらも、あれからかれこれ3時間くらいはゲームに没頭していた。
カチカチというコントローラーを操作する音と、聞き慣れた効果音が部屋に響く。流石に目が疲れてきたな。
こんなにぶっ通しでやることは多々ある。溜まっている自分の仕事なんか放っておいてそんな状態を続け、あっという間にもう一週間は経っている。毎回いい加減に仕事をしなければと思いつつも、ついついこのゲームを始めてしまう。駄目な自分だな。
そして、とうとう最後のステージのボス戦までたどりついた。
「いやあ、長かったな〜。ここまで来るのは!」
軽く伸びをして、ふう、と息を吐く。いつの間にか、視界がぼやけて画面の文字が見えづらくなっていて、目が疲れきっている事を訴える。
ごしごしと目を擦り、失敗した時のために一度セーブをしておいた。さあいよいよラストステージだと意気込み、スタートのボタンを押す。
「ヒーローが助けにきたぞ。お姫様」