Ω
□Alive! Alive!
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目の前には可愛らしい小花柄のパジャマを着た少女。
青白い指を俺に向かって突きつけてくる。
「ねぇ、どっちが先に死ぬか勝負しない?」
睨むようにこちらを見る少女の目は本気だ。
「やってやるよ。」
どうせ残り少ない命ですから。
死ぬときまでに全力で使ってしまおう。
『安楽の病床』
俺の入院している緑川総合病院は、近隣の人々からそう呼ばれている。
理由は簡単。
余命宣告された人しかいないから。
手の施しようがないくらい病気が悪化した人だとか、
稀にみる奇病で治療法が不明だとか、
生まれつき何かしら病気を持っていた人とか。
この病院に入った人は必ず死ぬ。
そう噂されるほど、死亡率が半端なく高い。
朝起きたら隣の病室のベッドが、誰もいなかったように綺麗に直されていることなんか日常茶飯事だ。
でもだからといって病院全体が死を待つだけの凄惨な空気に満たされている訳ではまるで、ない。
むしろ『後数年の命だから、楽しんでいきなきゃ』という明るいんだか馬鹿なんだか分からない院長のもと、日々患者たちは生きている。
俺は物心ついた時からもうすでにこの病院のベッドしか知らない。
家に帰った記憶なんて、数えるくらいしかないだろう。
俺の部屋と呼ばれている所には黄色のくまさんが蜂蜜の壺を持ったでっかいぬいぐるみがあった気がする。
前に帰ったのは数年前のことだから、記憶が曖昧だ。
心臓に先天性の障害を持って生まれきた俺は赤ん坊の頃
「7歳まで生きれないかもしれません」
そう宣告されたらしい。
『かもしれない』とはとてつもなく曖昧な表現だ。