君との子育ての日々 2

□バブ45
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ラミア達が目を見張る中、巨大ベル坊の足を片手で止めた長髪の男は、振り向きながら言い放つ。



「どんなものかと思ったが……

期待はずれだな」





バブ45

『冒険も終わりです』





男の言葉に、男鹿は訝しく返す。



「あ?誰だ、てめェ」



男の行動を見ている古市は、ただただ驚愕する。



「―――嘘だろ…

あの巨体を……片手で…」



古市の隣にいる未希は、亜希に話しかける。



「お姉ちゃん、あの人、アンジェリカさんの家にいた……」


「えぇ」



ゆっくりと返すと、亜希の中でどことなく違和感を感じる。



(あの人、盗賊じゃない気がする)




一方、巨大ベル坊は、足が動かなくなった事に疑問符を浮かべている。


その足元で、長髪の男が片手で巨大ベル坊の足を支えながら訊ねる。



「呪文は?」


「あん?」



男の質問に、亜希は聞き返す。



「呪文って、なんの………」


「この赤子を止める呪文だ。契約者しか知らん、独自の呪文があるはずだ」



小バカにしたように返すと、ア然としている男鹿と亜希に構わず、ポツリと呟く。



「面倒だな……」



瞬間、男鹿と亜希は目を見開く。




「殺すか…」



そう言い放つと、男は巨大ベル坊の足を振り払う。


傾いた巨大ベル坊に、皆、ガク然とする。



巨大ベル坊が宙に飛ばされるのを見ると、男は腰に挿している剣を抜こうとしている。



それを目撃した男鹿と亜希は、目をキリッとさせ、声を揃えて巨大ベル坊に叫ぶ。



「ごはんですよーっ!!」


「ごはんだよーっ!!」




その瞬間、ベル坊はピクッと動く。



「ダッ」



すると、ベル坊は光に包まれ、見る見るうちに小さくなっていく。


光がなくなって振り返ると、いつもの小さいベル坊が男鹿と亜希の前にちょこんと座っている。



「アーッ!!」



目を輝かせて、嬉しそうにはしゃぐ。



その様子に、アンジェリカは驚愕し、未希はホッとする。



「戻った……」


「よかった」



しかし、常識人の古市とラミアは呆れている。



(……てゆーか、それ呪文?)


「犬か」


「アー、アー」



いつもの大きさに戻ったベル坊は、無邪気に亜希の足に手を伸ばす。



「ベルくん」



亜希はベル坊を抱き上げ、頬擦りする。



「やっぱり君はこれくらいの大きさがいいよ」


「ったく、面倒かけやがって」


「ダーッ」



本当の親子のように微笑ましい光景。





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