君との子育ての日々 2

□バブ63
1ページ/4ページ




練習2日目……


男鹿達がやる気を出し、意気込んだ次の日、早速問題が起こる



「だから、てめぇのリーゼントが邪魔だっつってんだろっ!!」


体育館中に響きそうな神崎の怒鳴り声に、白いリボンで髪を纏めた葵は振り返った


「あぁっ!?こいつはオレのポリシーだ!!文句あんのかっ!!」

「あるに決まってんだろ!!さっきからブロックの度にネットにつき刺さってんだろーが!!
面白すぎんだよ!!
切れ、ボケ!!


リーゼントで練習を続ける姫川はポリシーと主張するが、神崎はそれを乱暴に指摘する

売り言葉に買い言葉で怒鳴り散らす二人の姿に、この段階でまた問題になったらさすがにまずいと葵は恐る恐る声をかける


「ちょっ…ちょっと、あんた達」

「「あ゛ぁっ!?」」

「邦枝っ!!お前からも言ってやれ!!」

「え?」


そして、思わぬ言葉が返ってくる


「それで、どんなレシーブするの(笑)とか!!」

「え?」

「しねぇよ!!てめぇ、マジぶっ殺すぞ!!」


神崎からまさかの促進された葵は戸惑うが、ボールを持ち直して顔を赤らめて小声で言う


「……まぁ、確かにスポーツをやる格好じゃないと思うケド…」


キャプテンの葵にも言われた姫川は、バツが悪そうに踵を返して舌打ちする

一方の神崎は勝ち誇った顔で呟く


「ほら見ろ」

「あっ、ちょっと…どこ行くのよっ!!」


不機嫌な表情で体育館の出口に向かう姫川の後ろ姿に、神崎は聞こえよがしに嫌味を言う


「ほっとけよ、どーせ6人いりゃいいんだ
正直、あいつ足ひっぱってたしなぁっ!!」

「神崎!!」


冷やかす神崎に怒鳴る寧々の隣で、葵は呆然と立ち去る姫川を見つめる


「――――…せっかくまとまりかけてたと思ったのに……」


落胆した葵の呟きを聞き、由加と飛鳥は目配せをする


――――――――




体育館を出て渡り廊下を進む姫川を、由加が呼び止める


「姫川先輩!!」


呼びかけられた姫川は、少し不機嫌そうに「あ?」と振り返る


「なんだ、てめーら」


そこにいたのは、ブラシとスプレーを持つ由加と…


「かみ」

「下ろしましょう」


ヘアアイロンと櫛を構える飛鳥の姿

しかし、目が笑ってない

これから何をされるのか、姫川は嫌な予感が過った


「なっ…、こらふさげんな、てめーら…」

「ふざけてませんよー、マジ本気っス」

「姐さんの足引っぱる奴は、アタシら許しませんからっ!」

「くっ…さわんな…」

「ええい、男のクセに往生際が悪い!!どーせ、大したツラじゃねーっしょ!!」

「グラサンも取っちゃえー」


抵抗も虚しく、姫川は由加と飛鳥の手によってヘアーチェンジされる

ワックスでセットした髪を下ろし、グラサンを取った姫川の姿


「――――ったく、てめーら」


その姿に、由加と飛鳥は言葉を失う


「後で覚えてろよ……」


綺麗なストレートヘアーに鋭い切れ長の瞳の、涼しげだが端正な顔立ちの青年


(誰!?)




バブ63

『何やってんだ!?』






バッターが打ったボールが青空に届く

校庭には、たくさんの生徒達が部活に励む

その光景を眺める事のできる屋上に、ヒルダとアランドロンは来ていた


「収穫は……?」

「今の所は何も…」


ヒルダの問いかけに、購買部で買ってきたパンを食べながらアランドロンは返した


「ふむ…こちらもだ…」

「…しかし、本当にいるんですかね…こんな所に…」

「分からん。王宮の報告はあてにならんからな。だが、事実だとすれば大問題だ」


王宮の報告を受け、二人は秘密裏に調査していたのだ


「この学園に…我々の関与しない悪魔が潜んでいるなど…な」


王族に関わる事のない、悪魔――

それが、この学園のどこかに―――


「とにかく、油断するな。尻尾をつかむまで気取られるなよ」


――――――――



その頃

バレー練習組は、誰もが驚愕に目を見開いてがく然としていた

その一同に、姫川はむくれながら言い放つ


「何じろじろ見てんだよ、さっさと練習始めっぞ」


そうは言われても、葵達はしっくりこない

リーゼントの髪を下ろし、グラサンを取るだけで美形になろうとは

どうしても信じられない寧々は、恐る恐る声をかける


「いや…え?どちら様?」

「姫川だよ、姫川!!見りゃ分かんだろーがっ!!」


目の前にいる美形が姫川という事を確認し、なんともいえない複雑な表情で困惑する



(いや…完全に別人じゃないですか…)



四人の思いが1つに重なった


「ふざけんなよ、てめーっ!!姫川はもっとこう、モサッとしてヌメッてカンジなんだよっ!!」

「あ゛ぁ!?」

「帰れっ!!ポリシーはどうした!!」


スポーツに不向きと指摘した神崎も姫川の変わりように、さすがに態度が変わる


神崎と言い合う豹変した姫川の姿に、いまだにドキドキする由加が感想を漏らす


「やー、スゲーイケメンが出てきてびびりましたよ」

「なんでリーゼントなんてしてんだ、あいつ…?」

「と…とにかく、これで全員そろったわね…」


戸惑いながらも一安心した葵だが、彼女の後ろからひょっこりと東条が現れる


「男鹿と古市と亜希と未希が出てったぞ」


そう告げた東条は、手をヒラヒラと振りながら続ける


「そして、オレも今からバイトだ」


一気に5人がいなくなり、葵達は呆然と絶句する



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ