君との子育ての日々 2

□バブ42
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「くっくっく……」



盗賊のアジトの城では、首領が喉を鳴らしていた。



「くく81」


―パン―



ギャグの後に手を叩くと、手下共は部下達に言い放つ。



「笑えーっ!!」



すると、部下達は一斉に笑い出す。



「わはははははっ!!」


「あざーっす!!」


「お頭さいこーっすよ!!」



部下達の笑い声が響く中、さきほどギャグを言った首領は牢に歩み寄って、中にいる人物に声をかける。



「フフン、どうだ?少しは協力する気になったか?



アンジェリカ君



牢の中には、古市が一目惚れしたアランドロンの娘、アンジェリカが手錠をかけられて座っていた。



アンジェリカはまっすぐと首領を睨みつけながら言う。



「何度言われても同じです。泥棒の片棒を担ぐ気はありません

捉えた魔獣を放しなさい」


「―――フン。あんなもの、二束三文にしかならん。お前が一言、協力すると言えば、いつでも…」



二人が会話している間にも響く部下達の笑い声。


いい加減、うっとうしくなった首領は叫ぶ。



「うるせぇーっ!!」


「やめろーっ!!」



手下に高らかに指示され、部下達はピタッと笑うのを止めた。




すると、首領は話を再開する。



「いいかね?アンジェリカ君。君達、次元転送悪魔というのはね、わしら盗賊の夢だ

どこへでも忍び込み、人知れず去っていく。どんな難攻不落の宝物庫も空家同然

まさに神出鬼没」


「そうですね。この手錠さえなければ、今すぐ消えてさし上げます」


「―――フン」



そこに、部下が慌てた様子で駆け寄ってきた。



「お頭、ガレとエッダからの通達です」



――――――



「王族の者だと!?」


「はい」



通達の内容を聞いた首領は呟く。



「ここの場所がわれたか…。フン、まぁいい。こんな時の用心棒だ

フフ…、こりゃ、そろそろ出番ですかな?先生」




首領の視線の先には、壁に寄り掛かり、無言で本を読む髪の長い男性。



「何をしている、警備を固めろ!!」


「へい!!」



首領が高らかに指示を出すと、部下達はそれぞれ持ち場に移動する。



そして、首領も走り去っていった。



足音が消えると、ため息を一つ吐いて壁に寄り掛かる。



「父さん…

今日帰るって言ってたけど、心配してるかな…

最悪の誕生日…。どうせ、忘れてるんだろうけど…」


誕生日にもかかわらず帰ってこない父親に、アンジェリカは不安になっている。


しかし、不安げなアンジェリカを励ます声が聞こえてくる。



「そんな事はない

ドレスを買ってあげるって言ってましたよ」



顔を上げて振り返ると、鉄格子につかまっている古市の姿。



「あなたは…」



まさかの人の登場に、アンジェリカは驚く。



「ちょっと待って下さいね。今、そちらに行きます」


「……え?父のお知り合いの方ですか?」


「えぇ、まぁ…。人間ですけどね」


「人間!?」





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