君との子育ての日々 2

□バブ48
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カズはほんのりと頬を赤らめながらヒルダに手を振ると、前を歩く男鹿と亜希に駆け寄る。



「いやー、さすがアニキ!!

石矢魔のマドンナ・亜希さんが彼女の上に、外国の方を家政婦に雇っているとは…!
あ、二人ともカバン持ちます!!」


「あのなー…」



嬉しそうに言うカズに、男鹿はウンザリとした表情で言い放つ。



「昨日から言ってんだろ。オレはてめーのアニキじゃねーし、ついてくんなっつーの!!

朝からうっとーしいんだよ!!行くぞ、亜希」


「そんなー、待ってくださいよ、アニキー!!」



右手でシッシッと追い払うと亜希の手を引いて、再び歩きだす。



「男鹿くん、あんな言い方しなくても…」


「いいんだよ、本当の事だし」



亜希が言うと、男鹿はウザそうな表情で返すと疑問を抱く。



(―――ったく、なんなんだ、こいつ。妙に懐きやがって……)



普段、周りに恐がられている人(一部除く)が初対面の男子に懐かれちゃ、戸惑うでしょう。


しかし、最大の本音はこれです。



(これ以上、亜希との時間を奪われてたまるか)



本音を胸に秘める男鹿は振り返って、亜希と繋ぐ反対の手でカズを指差す。



「大体―――…えーと…」


「あっ…、カズっす!!」


「カズは何年だよ?」


「1年です。1年6組、15番!!」


「出席番号まで…」



堂々とはっきり答えたカズに、亜希は呆れる。



「ほらみろ、オレと同い年じゃねーか

つまりだ―――…

ここから、導き出せる答えは…

オレは、お兄ちゃんではない


「いや…、そりゃあ…まぁ……」



きっぱりと言い切られ、カズは怯んでしまう。


しかし、負けじと言う。



「――――でも、男鹿さんの強さに本気で憧れてるんス」



カズのこの言葉に、男鹿はピタッと止まる。



「男鹿くん……?」


「不良の間では、もはや伝説ですよ、マジで!!たった1人であの石矢魔を制した、最強の1年生!!」


――ピク、ピク――


(あー、これは……)


「強くなりたいんです、オレも!!そんな男鹿さんをアニキと呼ぶのは、当然っス!!

いえ、呼ばせてくださいっ!!



力強いカズの申し出に、男鹿は顔を上げて振り返る。



しょうがないなあ〜〜、もう」



振り返った男鹿の表情はわかりやすいほど、緩みきっていた。


そんな男鹿の様子を眺めている亜希は、一人思う。



(………男鹿くん、わかりやすいな…)



ため息をついて呆れていると、カズが急に振り向いた。



「カ、カズくん…?「亜希さんも噂通りっス!!」


「う…噂……?」


「えぇ!!

亜希さんと未希さんの事は、うちの学校ですんごい話題になってるんスよ!

春風のように舞い、優しく温かい笑顔で東邦神姫をはじめとする石矢魔の不良達を一瞬で虜にした美しき少女、桜井亜希
ついたアダ名が『春の女神』

その名に違(たが)わない美しさっス!」



力を入れて話すカズに、亜希は戸惑うばかり。



「そうなの……?」


「えぇ、六騎聖も亜希さん達に持ったぐらいっスから!」


「そうなんだ……」



カズの言葉に、亜希は乾いた笑みを浮かべる。


(六騎聖……?)



後ろの男鹿は、先程カズが言った『六騎聖』という言葉に反応していた。





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