君との子育ての日々 2

□バブ59
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「あの…」


一方、木戸に呼ばれて残った亜希は、おずおずと訊ねる。



「話って…」

「私じゃなくて、彼があるそうなんだ」

「彼…?」



亜希が疑問の声をあげると、木戸は静かに問いかける。



「これでよかったのかね?出馬君」

「――――えぇ、有り難うございます」

(この声……っ!!)



木戸が問いかけたのは、窓の外―――裏庭でハトにエサをあげる出馬。

亜希は驚きを隠せない。




「これで彼らも必死になるやろし、久也らも納得のいく舞台が作れると思います」

「…すまないね。話の流れ上、ああいう条件がついてしまった」

「いやいや、かまいませんて」



そう言うと、エサをあげる手を止めて立ち上がる。


すると、ハト達が一斉に飛び去る。


目を見開く亜希と木戸。



「負けませんから」



パンパンと、ズボンについた土汚れを払うと、身体を部屋に向ける。



「あなたは…」

「よっと」



いまだに驚く亜希を見つめながら、出馬は窓枠を上って部屋に入る。



「出馬君、残すのは亜希さんだね」

「そうです」


すると、出馬はぐっと亜希に歩み寄り、彼女と向き合う



「それじゃぁ、私は職員室に向かうとするよ。後のことはよろしく頼む」

「えぇ」



その会話のあと、木戸は鍵を出馬に預け、部屋を後にした。

木戸がいなくなると、出馬は亜希に話しかける。



「また会えたな」

「そうですね」



亜希が微笑みかけると、出馬はハッとする。



「自己紹介が遅れたけど、僕は出馬 要っちゅーんや」

「あたしは…「桜井亜希さん…やろ?」

「え…?」



自分が名乗る前に、言われた亜希は戸惑う。



「なんで、あたしの名前を…」



亜希が疑問の声をあげると、出馬は薄く笑いながら返す。



「亜希さんの噂は静さんや先生から聞いとったんや」

「え…?」



小さく声をあげる亜希に、出馬は距離を詰める。



「石矢魔には――」


一歩



「優しく―――」



また一歩



「美しい―――」



そこで立ち止まり、亜希の頬に手を添える。



「女神さんがおると」



滑るように亜希の頬をなぞる出馬の指。



「出馬さん…」

「あの時から僕はずっと、亜希さんに会いたいと思うてたんや」



夏休みから抱いてた亜希に対する思いを打ち明ける出馬。



「出馬さ…っ!?」



亜希が言葉を紡ごうとした時、出馬に肩を引き寄せられ、唇を重ねられる。



「ん…」



出馬に抱きしめられ、亜希は逃げる事が出来ない。

口づけされた亜希の顔は火照り、開いてる胸元から一筋の汗が垂れ、色気が滲み出ていた。



「亜希さん、ちょっと僕の相手してくれへんか?」




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