君との子育ての日々 2

□バブ62
2ページ/6ページ




烈怒帝瑠の抗議は、ヒルダの声によって終わる



「外野は黙れ」



そう告げてヒルダがボールを上に放ると、葵はレシーブの体勢を構える



「おおっ」

「ジャンプサーブッ!!」



神崎と姫川が声をあげる中跳びあがったヒルダは、「ニヤ」と不敵な笑みを浮かべた

次の瞬間、見えなくなる程の豪速球のボールが葵を横切った

猛スピードのサーブで打たれたボールは、葵の後ろの壁を破壊してめり込んだ

あまりのスピードと破壊力に、誰もが絶句する


余裕の笑みを浮かべるヒルダは、嘲るように問いかける



「終わりか?」

(――は…速いなんてもんじゃない…)



光速で凄まじい威力のサーブを決められ、葵は一歩も動くことが出来なかった



(まったく見えなかった――…!)



すると、体育館内に次々と感想が沸き上がる



「うおおおっ、なんつーサーブだ!!」

「壁にめり込んぞ!!」

「つーか、人間技じゃねーだろ!!」

「今、パンツ見えませんでした!?」



驚きの声をあげる中、最後にスケベっぷりを発揮したのは、言うまでもない――古市である

肉眼で見えないサーブを目の当たりにした寧々達は、絶望的に顔を青ざめる



「あ……あんなのとれるわけねーっスよ」

「……っ」

「ねえっ!?パンツ!!見えましたよね!?」



不安げに葵を見つめる寧々の隣で、古市が真顔でスケベ心をストレートに発揮する

そんな彼を姫川は呆れ顔で「寝てろ」とバッサリ


表情が曇る寧々が不安を募らせていると、隣の未希に話しかけられる



「寧々さん、大丈夫ですよ」

「え?」

「葵さん、まだ諦めてませんから」

「それ――「もう一本よ!!」



寧々が疑問符を浮かべて返そうとした時、葵がヒルダに申し出た



「もう一本、お願いします」



目をギラつかせ、葵は負けん気全開



「姐さんっ!?」

(負けない)



対抗心溢れる葵の姿に、亜希は口元を吊り上げる



「葵ちゃん、結構負けず嫌いね……」



葵の挑戦を受けたヒルダは「よかろう」と返事した



(―――…打たれたボールを目で追ってちゃ間に合わない
大事なのは、打つ瞬間の軌道予想とタイミング―――……!!)



視覚に頼るな。



(あとは、音、気配、空気の流れ)



聴覚を研ぎ澄まし、気配を読み取れ

集中するため、葵は目を閉じる



(目をつぶった……!?)

「!!見ろ!!オガヨメ…」



皆の視線を集めるヒルダは先ほどより高く跳躍する



「さっきの倍は跳んでるぞっっ!!」



その跳躍は、ネットより高い

しかし、葵は動じずに気配を肌で感じとる



(いつもやってる事よ―――…!!)



全ての感覚を研ぎ澄ました葵は、閉じていた目を開いた




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ