君との子育ての日々 2

□バブ63
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「三木君……」


聖石矢魔学園の一室

そこは、六騎聖が使用する部屋


「こっそり練習してるみたいだけど…放(ほ)っといていいの?」

「……」


三木がバレーとはまた別の練習していることに七海は気づいており、その事を出馬に伝える


「あの技は諸刃の剣や」


うつ伏せの出馬は時折「んー」と唸りながらも、七海の報告に返して続ける


「未熟な者が使うには、危険すぎる。そう思て――」


書類やファイルなどが散乱する机


「あいつにはちゃんと教えてやらんかったんやけど…。一回見せたのがあかんかったなぁ
見よう見まねで、9割がた完成させとった…。天才やで、あいつ」

「出馬君もうかうかしてると、負けるんじゃない」


………の横で、七海は出馬に足踏みマッサージをしていた


「いやー、それ冗談になってへんて――…」


七海に告げられた出馬は疑わしく返すと、痛みのツボを押されて「おぉ、うっ」と声を上げる


「静さん、そこきくわー」

「こりすぎ…。ちゃんと整体行きなさい」


あまりのこりっぷりに呆れた七海は出馬に助言すると、「そういえば…」と話題を切り替える


「あの娘と話したの?」

「誰の事や」

「とぼけないで。桜井亜希ちゃんの事よ」

「あぁ、話したで。夏休みに一度会(お)うた時と、彼女が転校してからな」

「へーぇ……。実際、どんな娘だった?」

「噂以上に女神のような雰囲気やけど、中身はしっかりしとるけど案外素直やな」

「フフ。あの娘、不思議な魅力を持ってるのね
出馬君、あの娘気に入った?」

「あぁ。面白い人やな、亜希さんは」


出馬の言葉に、七海は「クスッ」と小さく笑みが零れる


「ホント、アイツが話した通りだわ」

「ん?静さん、どないした?」

「一人言。気にしないで」


薄く笑う七海の返答に疑問符を浮かべた出馬は、口元を吊り上げる


「ほんま、久也には驚かされたわ」


すると、彼の瞳に妖しさが帯びる


「いつからやろなぁ、あいつ
人が変わったみたいに強なったもんなぁ……」



――――――――――



その三木は、道場で胴着に着替えた男鹿と向き合う


「用意はいいかい?」

「おう、いつでも来いや」


三木と対峙する男鹿の姿を、亜希はキュッと口と手を結んで見守る


(男鹿くん…)


両者が準備万端となった所で、いまだに厳つい顔つきのベル坊が手を掲げて始めの合図する

だが……


「とりあえず、手出しはしねぇ」


ベル坊の合図に構わず、男鹿が挑発する


「奥義とやらをガツンと打ってこいや」

「…相変わらずだね。後悔するよ?」


二人の会話が終わり、ベル坊が再び手を掲げる


「ダッ!!(始め)」


しかし、二人はまたしても動こうとしない

そして、今度は三木が男鹿に問いかける


「あの時…、どうして僕を裏切った…?」

「あ?」


身に覚えがないのか、男鹿は訝しく疑問の声をあげた


「とぼけるな。3年前だ」


しかし、三木は鋭く淡々と言う


「中一の終わり…僕の転校が決まった頃……
君を倒す前に、聞いておきたいと思ってね」


不満に満ちた三木は怒りを滲ませて告げた


「マ゙マ゙ーマ゙マ゙マ゙ーっ。(いい加減始めろや!!だから、てめー嫌いなんじゃボケェェ)」


二度も掛け声を無視され、ついにベル坊はキレた

暴れるベル坊の身体を古市が押さえ、慌てて宥める


「ベル坊、落ちつけ」


そして、先ほど三木が言った3年前の記憶を探る


(3年前――中一の終わりつーと…まさか…!!)


心当たりがあったらしい

そんな古市に、未希は少し険しく訊ねる


「古市、3年前あの二人に何かあったの…?」

「あぁ、思い返したんだけど…」


そこまで話した古市は改めて思い返し、顔をしかめる


「あいつ、とんでもない逆恨みしてんだ」

「「え…?」」


古市の言葉に、姉妹は静かに驚愕する


「古市君は男鹿くんと三木君の間に何があったか、知ってるの?」

「あぁ………」


古市の苦い返事に、男鹿と三木の間に起こった事はただ事ではないと察する


「俺達が中一の終わり頃なんだけど…話せば長くなるんだよな……」


弱気な声で心配そうに告げる古市

しかし、亜希は瞳を凛とさせて返す


「構わないよ」

「え……?」

「長くなるってことは、それだけの事があったんでしょ。なおのこと聞かないと。ね、未希」


亜希と同意見なのか、未希は静かに頷いた

姉妹が古市に向ける眼差しには、固い決意が秘められている


「わかった」


三人の過去を聞くつもりなのであろうと悟った古市は一息つき、ゆっくりと語り出す


「話すよ。3年前、男鹿と三木の間に何があったのか」



てなわけで………


「てめぇか、男鹿ってのは」


破片や血が飛び散る廃墟


不良達の嫌悪の視線は、彼らに囲まれる今より少し幼さが残る顔立ちで「でんぷん」の四文字が書かれたTシャツの上から学ランを羽織った少年

男鹿辰巳――当時13歳



ここから、物語は3年前へと遡る




→あとがき
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