09/08の日記

19:54
突発的小話(ONE PIECE)
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波の音が心地好く耳に入り、潮の香りが鼻をくすぐる


それらを感じ取った亜希は瞳を上げ、ゆっくりと起き上がる


「お、姉ちゃんも気がついたか!!」

「!?」


目を覚ますなり、いきなり麦わら帽子をかぶった少年の表情が輝く


「え………」


目の前にいるのは、見知らぬ少年

なのに、その少年は自分に向かって『姉ちゃんも』って言った

『も』……!?


他にも誰かいるのだろうかと振り向くと、鼻の長い少年とぬいぐるみサイズのシカと楽しそうに話す妹の姿


「えぇぇぇぇぇ!?」


亜希の驚愕の声に妹と話す少年とシカはこちらに振り向き、他の部屋にいた女性や青年達は何事かと飛び出した


――――――――――



甲板にうまいこと全員集合したので、亜希はもちろん、未希は改めて自己紹介した


「それで……別々の所にいた二人が、この船にいたってことなのね」

「はい、そうです」


オレンジのショートヘアーの女性、ナミが確認するように問いかけた

ナミの質問にしっかりと返す亜希


(あぁ、ナミさんと亜希ちゃんのやり取り、素敵だ…)


この美女のやり取りを眺め、金髪の青年――サンジはすっかりメロメロ状態である


「オイ、お前ら本当にいつの間にかこの船にいたのか?
どっかの島に停泊している時に忍び込んだんじゃねーの?倒れてるフリして、食糧や宝盗むつもりだったんじゃねーのか?」


……と、姉妹に疑いの目を向けるのは、緑色の頭の青年、ゾロ


「失礼な!!確かに、仕事がなくてお金に困ってるけど、人様から盗もうなんざ、これっぽちも考えたことはありません!
だいたい、あたし達は、海から遠い所に住んでました!」


亜希にきっぱり返され、ゾロは『ウッ』と怯む

そして、金髪の青年、サンジがゾロに猛抗議する


「オイ、クソマリモ!てめー、何亜希ちゃんと未希ちゃんを疑ってんだ!!」

「こいつら、島に着く前には確実に乗ってなかったんだぞ!!普通、疑うだろーが!!」

「てめェ、何ふざけた事ぬかしてんだ!!
こんなにも可愛くてしっかり者の亜希ちゃんと、素直でいたいけな未希ちゃんが泥棒なんてするわけねーだろ!!」

「こんな見た目だからこそ言ってんだろーが!!」

「『こんな』って言うな!!亜希ちゃんと未希ちゃんに色々と失礼だろーが!!」


揉め合うサンジとゾロの姿を、亜希は不安そうに見つめる


「あの二人、止めなくていいんでしょうか……?」

「あーいいのいいの!!いつもの事だから」

「そうそう。あの二人の口喧嘩は日常茶飯事だから、気にすんな!!」


ナミに続いて助言したのは、長っ鼻の少年――ウソップである


「そう…なんですか?」

「そうそう!いつの間にか終わってる事が多いからな!」


ナミとウソップの話を聞き、未希はとある光景を思い出す


(あぁ、銀さんや土方さんと同じ仲ってことか…)


すると、ウソップはルフィがジーッと姉妹を見つめている事に気付く


「ルフィ、どーした?二人を見つめて」

「なー、お前ら、さっきの話だと、この世界知らないんだろ?」

「そうなりますね……」


姉妹からすれば、ここは知らない世界

右も左もわからず、二人を知ってる人間は存在しないだろう


「よし!お前ら、おれ達の仲間になれ!!」

「!?」

「!!」


ニシシと笑うルフィの発言にゾロ達は驚愕するが、サンジだけは目がハートになった


「ルフィ、お前本気か!?」

「あぁ!!」

「こいつら、素性がわかんねーんだぞ!!
そんな奴らを仲間にするっつーのか!?」

「あぁ!!」


ゾロが訊ねるも、ルフィはニカッと笑って返す


「だって、この二人は家も知ってる奴もいねーんだ
だったら、おれたちが帰る場所や仲間になればいいだけのことだろ?」


ルフィの発言に脱力したゾロは、ナミ達に振り向く


「お前らはどうなんだ?」


サンジの意見は丸わかりだが、素性のわからない姉妹をこの船に置く事など、他に反対する者もいるかもしれない

そうそう思ったゾロだが……


「あら、私は賛成よ?」


あっさりとしたナミの言葉に、ゾロは唖然とする


「何ィ!?」

「ルフィの言うとおりよ。それに、この娘達……」


すると、ナミは姉妹に顔を向ける


「襲いたいくらい、可愛いと思わない!?」


顔を赤らめてうっとりとしたその表情は、すっかり百合に目覚めている


「…キャラ違くね?」


姉妹の虜になってしまったサンジとナミ


「おい、お前らは……」


ドン引きしたゾロは、そう言いながらチョッパーとウソップに顔を向けるが………


「え!?ウソップって副船長なの!?」

「すげーだろ!!」

「うん!!」

「おれ、初めて知ったぞ!!」


ウソップの嘘を素直に信じる未希の姿

そして、ナミと楽しそうに話す亜希の姿

その二人を、サンジはメロメロ状態で眺める

問題はあるが、とりあえず彼らと仲良くなったのは確かだろう

あっという間に馴染んだ姉妹の姿に、ゾロは脱力してしまう


「ったく……」


呆れたゾロが頭を抱えていると、未希がいつの間にか腰に差してある刀を見つめる


「どーした」

「これ、すんごくいい刀だなと思って…」

「お前…、そういうのわかるのか?」

「はい!」


見上げながら笑顔を浮かべながら、未希は元気のいい声で返事した

だが、その笑顔がゾロに可愛らしく映り、頬が紅潮する


「うち、こう見えても剣を使ってたんです!」

「そうか…」


この瞬間、ゾロの気持ちが変わった


「ルフィ、こいつら仲間にしてもいいぜ」


同時に、麦わらの意見が一致する


「そうか!!」


ようやく全員賛成したことで、姉妹の麦わら一味入りが決定

その事が嬉しく、ルフィは再びニカッと笑った


「よーし、お前ら!!これから、亜希と未希の歓迎会だー!!目一杯騒げ!!」

「おぉー!!」


はしゃぐ一味の片隅で、サンジは亜希に訊ねる


「亜希ちゃん、好きな食べ物はあるか?リクエストがあれば、作るけど」

「スイーツが好きです。特に、ホイップクリームが乗ってたら、最高!」

「可愛い娘の好みがスイーツ…!ますます可愛い!」

「そうですか?あと、パスタやサンドイッチも好きです!」

「了解」


すると、サンジは亜希の手を取って続ける


「未希ちゃんのリクエスト聞いたら、すぐに取り掛かるのでしばしお待ちを。お姫様」


そう言って、サンジは騎士のように亜希の手の甲に唇を落とした

途端、亜希の顔がボッと赤くなる

照れくさい気持ちをこらえ、亜希は口を開く


「サンジさん、キザですね…」

「おれはレディに優しいから」

「そうなんですか?」

「そう。でも――」


すると、サンジは亜希の耳に顔を近づけ、囁きかけるように続ける


「亜希ちゃんには特別な気持ちになっちゃったから、特別優しくなるからな」

「ひぁっ…!」


耳元で告げられ、亜希の肩がピクッと反応した


(いちいち反応が可愛過ぎんだろ)


サンジが一瞬で抱いた特別な気持ち


(いつか、絶対おれにその心を振り向かすからな、亜希ちゃん)



姉妹を巡った恋が、少しずつ動き始めていた
カテゴリ: もしも小話

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