僕の鉛筆

□第三話
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「…なぁ、何時まで歩くんだ?」
「そうだよ大輔〜」
「なんで僕に言うの!?そもそも"少し歩こう"って提案したの一紀でしょ!!?」
柄にもなくキレる僕。
だって、一紀が提案したから散歩(…的な事?)してるのに、なんで一紀が僕に質問してくるの?それってなんか矛盾してるでしょーが!!
「もぉ私、疲れたよ…」
はぁ と溜息をつく奈緒。無理もない、奈緒の体内時計によれば(奈緒の体内時計は天下逸品、殆ど狂いが無いのだ)僕達は既に二時間近く歩いている。
「そうだな…。どうする?大輔」
「はあぁ?だから…なんで僕に!?」
「だって、この事件(?)の当事者大輔だろ?」
だからってこーゆー時だけ僕に頼るの止めてよ!
「さっきまでは自分勝手に行動してた癖に…」
僕がぼそっと言うと、一紀はわざと臭く「あぁ?なんか言ったか??」と言った。……軽く怖い。
「…何も。……」
僕はそう言ってから。一息置いて、また言った。
「じゃ、少し休もうか?」
僕の言葉に、奈緒が跳び上がる。
「やったー!休憩だぁー!!」
遠足で疲れた小学生か、アンタは。ま、そーじゃないと奈緒らしくないか…。
「調度伐り株もあるし、あの木陰で良いか……って………」
僕は伐り株を指差し、そして気付いた。
「あぇええぇぇぇッ!!!!?」
きッりかぶが…ぁぁあ!
「ッ鉛筆…!!?」
驚きの余り、僕はその場から二・三歩後ずさった。……のに。
<スタスタスタ…>
二人はそんな僕を無視、鉛筆(もとい伐り株)に歩み寄る。
「大輔、何やってんだよ。早く休もうぜ?」
「ッえ…」
もしかして、驚いてるの、僕だけ?
「大輔ったらさぁー、そろそろこの"鉛筆とかの文房具だらけの空間"に慣れなよー」
「だっ……て」
「あー、コイツ"現実以外は信じません!"って感じだから、まず無理だろ!」
「言えてるー!」
鉛筆に座りながら あははは と笑う二人。僕だけが付いて行けてないのか…。
「…はぁ……」
虚しいなぁ、空しいなぁ。
<パタパタパタ…>
抵抗はあるが、僕は取り敢えず、二人の横の鉛筆に座った。

奈緒の体内時計で約三十分、僕達は鉛筆に座っていた。
「うーんッ!」
奈緒が伸びをして、言う。
「大分疲れも取れたし、そろそろ行きますかぁ!」
「そうだなッ」
二人が勢い良く立ち上がる。
「あ!大輔ー、」
奈緒が僕に何かを問いてきた。
「何?奈緒」
「手の鉛筆、取れた??」
僕は手を見る。…相変わらずだ。
「取れてない…ね」
すると奈緒はニコッと笑って言った。
「"疲れは取れたケド、手の鉛筆は取れませんでした"みたいな!!」
そして、爆笑。勿論一紀も笑っている。
僕は思い切って言ってみた。
「二人共ッ!!」
二人は笑いながら僕に目をやる。
「二人にとって、人の不幸ってナニ!?」
「「人の不幸??」」
すると二人は、案の定揃ってこう答えた。。
「「蜜の味ー♪」」
「―――ッ!」
やっぱりかあぁぁぁ!!!
<ガサササッ>
「「「!!!」」」
すると突然、僕達の後ろにある茂み(勿論鉛筆)が、音を立てて ワサワサ と動き出した。
「ナニッ…!!?」
「何か居るのか…!?」
「ッ恐ぃよ…!」
僕と一紀は戦闘体制に入り(まぁ僕が戦闘体制に入った所で、あんまり意味が無いんだけど)、奈緒は僕達の後ろに隠れた。
するとそこから出て来たのは―――


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