短編

□彼の温もりが全ての答え
1ページ/1ページ

「やっほー!十代」

そう言って、十代の部屋に勝手にあがる私は図々しいのかな。まあ、駄目って言われても入るけど。

「……何の用だよ」

「私も十代を見習って引きこもろうかと」

私は上のベッドに行く。梯子を上る際にパンツが見えたかもしれないが気にしない。羞恥心は前世に置いてきたんで。

「嫌がらせに十代のベッドにもぐろうとしたけど、狭いからやめた」

さっきから十代の反応がないんだけど、生きてる?喋りまくってこのフィールドを二酸化炭素で充満させてやろうか。

「最近、来てなかったけどレッド寮が相変わらずボロくて安心したよ」

十代から応答なし。私はマイクテストしてるわけじゃなく、貴方に話してるんですけど。

「久しぶりだよね。会うのも、話すのも」

これを会話と呼んでいいのか分からないけどね。十代は無反応だし。

「一目会えただけで嬉しいな、なんて」

嘘じゃない。だって、異世界から戻ってきてから十代とは疎遠になってしまったもの。ずっと寂しかった。
十代は変わった。大人になった、のかな?悪く言えば老けた。
十代じゃなくて三十代でいいよもう。

十代の変化に戸惑ったのは私だけじゃない。ヨハンも虹の上から心配そうにしているよ?……ってこれじゃヨハンが死んだみたいだ。彼はアースティックだかノーク校だかに帰ったじゃないか。つーか、お前の母校どこだよ。

「私、十代のカードなら良かったな。そうしたら一緒にいられる」

私もワクワクを思い出させたり、脳内をエコーロケーションしたい。
でもって、ネオスよろしく筋肉で割り箸が折れるような、たくましい体になって十代を守ってあげたい。

「……十代」

私の心はストッキングだ。不安でほつれ、伝線しそう。

「本当は別れようって言いにきたんだ。十代を見たら何にも言えなくなっちゃったけど」

未練がましいのかな。愛に賞味期限はないって信じたいだけなんだ。

「でも、私は十代がずっと好きだから。信じなくてもいい……知ってて欲しい」

涙が頬をつたう。醜いエゴも一緒に流れてしまえ。

「……大、好き……十代っ」

「鼻水出てるぞ名前」

うん。泣いたら鼻汁も出るよね。私のベッドにもぐり込む十代。空気読めよ。ここは可愛い彼女を口説くところじゃないの?君の瞳にレインボールインぐらい言えやボケ。

「ごめん」

「それどういう意味?どうとでも取れるから微妙なんだけど」

「寝るか」

十代のスルースキルに私は成す術もない。本気で寝ようとしてるし。何なの。私は十代のことを想うと夜しか眠れなかったのに。

「何も言わないなら都合のいい方に解釈するけど」

「ああ」

逆から読んでも、ああ。いや、そんなことどうでもいい。

「名前」

人違いです。なんてね。ずるいよ十代。私、何も言えなくなる。

「おやすみ。名前」

「十、代……」

十代の胸に私は顔を埋める。変わらない胸の鼓動が聞こえた。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ