短編
□彼の温もりが全ての答え
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「やっほー!十代」
そう言って、十代の部屋に勝手にあがる私は図々しいのかな。まあ、駄目って言われても入るけど。
「……何の用だよ」
「私も十代を見習って引きこもろうかと」
私は上のベッドに行く。梯子を上る際にパンツが見えたかもしれないが気にしない。羞恥心は前世に置いてきたんで。
「嫌がらせに十代のベッドにもぐろうとしたけど、狭いからやめた」
さっきから十代の反応がないんだけど、生きてる?喋りまくってこのフィールドを二酸化炭素で充満させてやろうか。
「最近、来てなかったけどレッド寮が相変わらずボロくて安心したよ」
十代から応答なし。私はマイクテストしてるわけじゃなく、貴方に話してるんですけど。
「久しぶりだよね。会うのも、話すのも」
これを会話と呼んでいいのか分からないけどね。十代は無反応だし。
「一目会えただけで嬉しいな、なんて」
嘘じゃない。だって、異世界から戻ってきてから十代とは疎遠になってしまったもの。ずっと寂しかった。
十代は変わった。大人になった、のかな?悪く言えば老けた。
十代じゃなくて三十代でいいよもう。
十代の変化に戸惑ったのは私だけじゃない。ヨハンも虹の上から心配そうにしているよ?……ってこれじゃヨハンが死んだみたいだ。彼はアースティックだかノーク校だかに帰ったじゃないか。つーか、お前の母校どこだよ。
「私、十代のカードなら良かったな。そうしたら一緒にいられる」
私もワクワクを思い出させたり、脳内をエコーロケーションしたい。
でもって、ネオスよろしく筋肉で割り箸が折れるような、たくましい体になって十代を守ってあげたい。
「……十代」
私の心はストッキングだ。不安でほつれ、伝線しそう。
「本当は別れようって言いにきたんだ。十代を見たら何にも言えなくなっちゃったけど」
未練がましいのかな。愛に賞味期限はないって信じたいだけなんだ。
「でも、私は十代がずっと好きだから。信じなくてもいい……知ってて欲しい」
涙が頬をつたう。醜いエゴも一緒に流れてしまえ。
「……大、好き……十代っ」
「鼻水出てるぞ名前」
うん。泣いたら鼻汁も出るよね。私のベッドにもぐり込む十代。空気読めよ。ここは可愛い彼女を口説くところじゃないの?君の瞳にレインボールインぐらい言えやボケ。
「ごめん」
「それどういう意味?どうとでも取れるから微妙なんだけど」
「寝るか」
十代のスルースキルに私は成す術もない。本気で寝ようとしてるし。何なの。私は十代のことを想うと夜しか眠れなかったのに。
「何も言わないなら都合のいい方に解釈するけど」
「ああ」
逆から読んでも、ああ。いや、そんなことどうでもいい。
「名前」
人違いです。なんてね。ずるいよ十代。私、何も言えなくなる。
「おやすみ。名前」
「十、代……」
十代の胸に私は顔を埋める。変わらない胸の鼓動が聞こえた。