短編
□孕ませてやるよ
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早いもので、もう一年が終わる。
「お、やっと起きたのか名前」
ヨハンがずいと近づく。青緑が私を覗き込んだ。
「よく眠ってたな。俺が吸っても舐めても起きなかったぜ」
「あんた、何してんのよ!」
どう考えても寝てる人間に働く行為じゃない。
「怒ってるのか? 名前」
「別に。それよりトイレ行きたいから放して」
体をがっちりと拘束されては動きようがない。私はヨハンの抱きまくらとなっていた。
「いっそのこと、ここでしろよ!そういうプレイもありだろ」
「ヨハン。殴っていい?」
「少しだけ我慢してくれよ。名前と一緒に新年を迎えたいんだ」
ヨハンは真顔で急に言いだした。反則だ。胸がきゅんとした。私だって大切な人と新たな時を祝いたい。
ベッドでお互い丸裸で情緒もへったくれもないが、要は気持ちの問題である。
「あ」
年が、明けた。
「今年もよろしくヨハン」
「これからも、だろ? 俺は名前を手放す気はないぜ」
「う、うん」
恥ずかしいけど、嬉しくもある。私もヨハンに伝えたい。だから、唇に想いを乗せて。
「ヨハン。大好き」
私はヨハンの頬にキスをした。彼は、微笑んで受け入れてくれた。
「名前、可愛いすぎだろ!しいて言うなら口が良かったけど」
「口はヨハンからして欲しいな」
「了解。可愛い名前の頼みなら何だって聞いてやるぜ?」
ほどなくしてヨハンから熱いキスが届く。口内まで舌が伸びてきて中は荒らされた。それでも嫌じゃなくて、もっと欲しくなる。
「さっきから変な音がするな」
「多分、除夜の鐘かな」
「除夜の鐘?」
「うん。煩悩を取り除くために百八回つく鐘のこと」
説明し終えた途端ヨハンは目をきらめかせる。変なことを考えてなければいいが。
「じゃあ俺は名前を突くぜ!覚悟しろよ」
「え、ちょっと待って!無理よっ」
廃棄された大量の避妊具が映る。彼らは「まだ足りないのか」と、あざ笑う。
「やめてヨハン!ゴムもないのにっ」
「外に出すから大丈夫。体中ぶっかけんのもいいな」
「やだ、やめ、て……あんっ」
「嫌そうには見えないけど」
「だ、駄目よ。だって」
ヨハンは続きをじっと待ってる。
「……あ、赤ちゃんができちゃう」
涙で視界がぼやける。ヨハンは今、どんな顔をしてるのだろう。
「ふーん」
「あ、ヨハン!」
重くて、苦しい。でも、すぐに突き抜ける快感へと変わる。
「くっ、ああ!」
「なあ、名前」
ヨハンの声は私を全身不随にした。
「孕ませてやろうか?」
彼に逆らうことなど、できなかった。