短編

□君は恋人!?@
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きっかけは一枚のカード。後にこのカードが大事件へと発展するのであった。
「ねえ、知ってる? 遊城十代に彼女ができたらしいよ!」
「えっ。し、知らなかった……」
「まあ、嘘だし知らないのも当然よね!」
「……はい?」
いい暇つぶしにされたようだ。
「こんな簡単に引っかかるなんて、あんたよっぽと遊城十代のこと」
「純粋にデュエリストとして尊敬してるだけよ! 変なこと言わないでっ」
「え〜本当に?」
からかい混じりの口調から、信用されてないのだろう。
「怒んないでよぉ。いい物あげるからさ!」
「何これ。絵柄がないけどカード?」
「それはね、嘘が本当になるカードよ! 最近噂になってたでしょ? パックに偶然入ってたのよ」
「確か、白紙の部分に嘘を書くとそれが本当になるってやつだっけ?」
おまじないに近いもので、女子の間で話題になっていた。恋愛成就のため、幻のカードを引き当てようとする生徒も少なくなかったとのこと。
「そうよ。正直うさん臭いし、あたしはそういうの信じてないから名前にあげるわ」
「え、いいの?」
「もちろん! せっかくだから『十代くんと恋人同士』って書けけば? 本当にそうなるかもよ?」
「書くわけないでしょ、もうっ!」
きっぱり否定したものの、名前の中でカードの存在感が薄れることはなかった。
***

「ただの、おまじないだよね」
カードには『十代くんと仲良し』と、つたない字で記されていた。
「これくらいなら問題ないよねっ。別にやましい意味があるわけじゃないし、大丈夫!」
言い訳がましいことを言ったところで、肯定する者はいない。
名前はカードをデッキにしまい、就寝した。
「十代くん……」

***

「おはよ名前!」
「お、おはよう十代くん」
名前の口元にしまりがない。名前にとって、十代の存在がギフトカードなのだから無理もないが。
今日も一日頑張れそうだ。
「名前、おはよう」
「あ、おはようヨハン君」
ヨハンは甘ったるいオーラに気づきもしなかった。
「妙に嬉しそうだけど何かあったのか?」
「へっ、あ、何でもないよ!」
「嘘つけ。こんなニヤニヤしてそれはないぜ! 言えよ、俺たちの仲だろ?」
「ひゃ!」
ヨハンが名前の頬を左右に引っ張った。彼は、ふざけ半分に「白状しろよ」と言う。
「ヨハンくっ、やめてよお……!」
「ははっ! お前のほっぺ、よく伸びるな!」
端から見れば仲のいい友人同士のやりとりだ。しかし、それが気にくわない人間がいた。
「おいヨハン。俺の名前と、いちゃつくなよー!」
「……は?」
嫉妬ともとれる言動。聞き間違い、だと思いたい。
「私、耳おかしくなったのかな」
「十代が『俺の名前』とか言ってたけど、気のせいだよな?」
「気のせいも何も、名前は俺のだし」
十代の発言に名前は卒倒しそうにそうになり、ヨハンは頬がひきつるのを感じた。
「だって名前は俺の彼女だからな! ヨハン、お前には渡さないぜ?」
波乱の幕開けだ。
 

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