短編2

□制服の秘密
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十代がいつも着ている赤いジャケットが密かに気になっていた。
「十代はまだ寝てるし今のうちに」
私はベッドから出て、十代の制服を拾う。触ってみるが、変わったところはない。
「おっかしいなぁ」
私の記憶が正しければ、上着は下だけ異様にヒラヒラしてたはず。
「着たら何か分かるかな?」
さっそく試着。ほのかにただよう彼の香りで頬が少し熱くなったのは内緒だ。
「うぅん。特に変化なしか」
くるりと、はためかせてみても形状は維持されたままだ。何の変哲もない。
がっかりして、上着を脱いだ。代わりに黒のハイネックに目をやる。
「……せっかくだし」
寝息をたてる十代を横目にそれを着用した。
「ちょっと大きいかも」
十代も男なんだな。
つい、思い出してしまった。粘液の音と汗の匂い。そして、心身ともにどろどろに溶けて同化したことを。
「……何やってんだ?」
「じゅ、十代っ!」
十代が起きてしまった。これだけは見られたくなかったのに。だって、恋人の服を黙って着るなんて、変態じゃないか。おまけに十代は薄笑いを浮かべているし。
「そんなに俺の服を着たかったのか?」
「違うわよ!」
「似合ってるぜ。エロい」
「私は十代の制服の秘密を暴きたかったの!」
十代は、きょとんとして「秘密?」とオウム返ししたので、私はこれまでの経緯を話した。
「名前に着こなすのは無理だぜ」
「そこまで言うなら今、試しに着てみてよ」
「いいぜ」
十代は素肌に赤いジャケットを羽織った。その動作に一瞬、息を呑んだ。いい男は何をしても格好いいのだろうか。
「ほーら。見ろよ。ちゃんとなってんだろ?」
「あ、うん」
普段は露出が少ない十代が、今はインナー無しに直接上着を羽織っている。色気も尋常じゃない。
昨晩の光景が蘇ってきた。
「私、着替える!」
「もっと着ててもいいのに」
「それじゃ十代寒いでしょ」
「別に。それとも似合わない?」
「似合うから、近くに寄らないでっ!」
これ以上、十代のおもちゃになるのは御免だ。とっとと着替えよう。
しかし、背中に突き刺さる視線は無視できなかった。
「十代」
「俺のことなら気にすんな」
「するわよ変態! あっち向いてよ、着替えられないじゃない!」
「名前の生着替え、楽しみだぜ!」
結局、十代の視線に犯されながら着替えた。もうお嫁にいけない。
 

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