短編2

□君の隣を夢見て
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昔、十代の部屋で眠ってしまうことがあった。そして、ふと目が覚めると、隣に十代がいるのだ。
心地よい温かさは眠気を誘う。私は、恋人の温もりに包まれながら再び夢の世界へ旅立った。

***

「……いやだ。いつの間に寝ちゃってたみたい」
おそらく待っている間、睡魔に襲われてしまったのだろう。自室なら問題ないが、ここの主は十代だ。
「靴はあるから十代いるのかな?」
狭いからすぐに見つかるはずだが。
「あ、いた」
十代は上段のベッドで寝ていた。下段は私が使ってたし悪いことしたな。
「もう。ジャケット脱がないと、しわになるじゃない」
無頓着なのか無関心なのか分からない。
「……よく寝てるわね」
十代から生気が感じられず、まるで人形みたいだ。忙しい彼を休ませてあげたいし、眠りを妨げるつもりはない。しかし、怖くて「十代」と呼んでしまった。
「ねえ、十代。わざわざ上じゃなくても、隣あいてたのに」
以前の十代なら隣にいたのに、今は温もりが遠い。寂しくないと言ったら嘘だ。
「でも、今日も私を起こさないでくれたんだよね。ありがとう」
十代の変わらない一面もある。優しさは、あの日のままだ。
「本当はあなたに触れたいけど、まだその時じゃないよね?」
十代が裏で何をやってるか知らない。また一人で闘い、背負い込むつもりかもしれない。けれども、私は何も言わないし聞かないだろう。干渉することが愛とは限らないし、十代はそれを望んでないから。
「十代。また明日」
焦る必要はない。少しずつ受け止めていけばいいじゃないか。いつか十代の隣で笑えるなら、私は、それだけで幸せだから。
 

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