短編2
□ドSデレ
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「発情期か? これだから淫乱は困るぜ」
「ち、違うもん!」
十代に乗る名前。彼は寝込みを襲われたのだが平然としている。名前の苦労も報われない。
「じゃあ、何だよ」
「ふん。余裕でいられるのも今だけなんだからねっ!」
震える手足。うっすら色づく頬。ゆとりがないのは名前で、精神的な立場は今も十代の方が上である。こんな時でも淡々と「パンツ見えてるぜ」と指摘するほどだ。
「いやあああっ勝手に見ないでよ!」
「お前が見せたんだろ」
「うう、でも……」
「パンツ見られて騒ぐ奴が俺を襲うなんて百年はえーよ」
「な、何よ! 大体、彼女のパンチラに顔色一つ変えないなんて本当可愛くな、いっ」
名前の頬に指がめり込み、唇はみっともなく前に突き出た。女として、恋人にこんなマヌケな顔を晒すのは問題である。しかし、それも些末なことだ。
十代の鋭い眼光に名前は身がすくむ。
「……人が寝起きだってのにギャーギャーうるせぇんだよ」
「ひい!ごめんなさっ」
「パンツ見られたくなきゃ、最初から穿くな」
十代は名前のショーツをびりびりに破った。
「ノーパンでアカデミア内を練り歩くか? ああ?」
「ごめんなさい許して十代!」
「黙れメス豚」
「ひぎいっ! い、痛い……!」
十代は、排泄を行うであろう場所にずかずか入ってきた。ミシミシと痛々しい音を立てるが彼にとっては、いいBGMぐらいにしか思わなかった。
「お父さん、お母さん。ごめんなさい、名前は汚れてしまいました……」
「元から中古だろ」
「お尻が痛いよお……」
「意外と悪くなかったぜ」
名前はつい先ほど十代に、穴を開拓された。彼女は泣き喚いて嫌がったが、逆に彼の欲を増進させてしまった。
十代はまるでワクワクを思い出したかのように、輝いていた。
「一応聞いてやるけど、何でこんなことしたんだ?」
「だって、十代ばっかりズルい」
「第二ラウンド行くぜー!」
「やめてっ入れようとしないで!」
十代は凶器で名前の秘部をなぞった。堅く閉ざされた壁を突き破りたくて、うずうずしている。
「私だけ十代が好きみたいで不安なの。十代は私のこと好き?」
「ああ。俺だけの玩具だと思ってるぜ!」
「そんな良い笑顔で言わないでえええ!」
酷い言われようだが悲しいもので、名前はときめいてしまった。むしろ少し興奮している自分に絶望する。
「ヤキモチを焼くのはいつも私。どんなにアプローチしても、十代はのらりくらりとかわす。色仕掛けにも動揺しない」
「あのなー俺も人並みに嫉妬したり焦ったりするけど」
「ほ、本当?」
「知りたいか?」
獲物が引っかかり、にたにた笑う十代。自分の言葉に踊る名前が愛しいのだろう。
名前は何かを察したのかムッとして「別に!」と、意地を張る。
「それよ『俺の方が有利なんだぜ?』って顔、本当にいじわるね!」
「地顔だって」
「私もう寝るっ」
「はいはい。おやすみ」
疲労のせいか名前の寝息はすぐに聞こえた。
「名前も馬鹿だよな。好きでもない人間と一緒にいるわけねえのに」
十代は名前に「好きだ」と言わないが、こうして隣にいる。からかったり、イジメたりするのも、傍にいなければできない。名前は気づいているのだろうか。
「馬鹿で空回りする名前は最高に可愛いなんて言えるか、ばーか」
十代は照れ隠しに名前の額をぴん、とはじいた。