短編2

□性夜の奇跡
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きらびやかなイルミネーションが街を彩る。大きなもみの木には、実を結んだかのように色とりどりの装飾品が飾られていた。この華やかな景観から分かるだろう。もうすぐクリスマスが控えている。
そんな折に十代は精霊である名前と出会った。街中でうろつく彼女を不審に思い、とっつかまえたのだ。悪事を働くのなら懲らしめなければと、十代は張り切るが……。

「へー主人にクリスマスプレゼントを渡したいのか」
「はい、日頃お世話になっているのでこんな時に何かできたらって」
「何であそこにいたんだ?」
「それより十代さん」
「何だ?」
「これ、ほどいてくれませんか?」

名前は精霊用の特別なロープで捕縛されていた。亀甲縛りにされた少女と楽しげな美男子という異様な光景だが、名前は十代以外に見えないのでおそらく問題ない。

「ああ、わりぃ」
「いえ……私、怪しかったでしょうし」
「いや、縛ったのは俺の趣味だ」
「え!?」

不審者を取り押さえるためではなかった。面白半分でやったのだ。
名前は、悪人は十代の方ではと思うものの、猿ぐつわを付けられそうになったので口をつぐむ。遊城十代は精霊が見えるほど清らかな心を持ち合わせているが、いかんせんサディストである。
しかし、困った者を見過ごせないヒーローでもあった。

慌ただしく準備をしているうちにクリスマスイブを迎えた。

「十代さん。ありがとうございます」
「どういたしまして。ご主人様、喜んでくれるといいな」
「はい! あ、ソリを用意したので十代さんも乗ってください」
「名前の上に?」
「ソリに!」

余談だが、名前は今日だけ十代の怪しい力で実体化していた。また、雰囲気を出すため彼女はサンタクロースの格好をしている。
ただし、下着はいっさい身につけていない。お金がなかったのだ。

鋭い視線が舐めるように女体を追う。スカートのすそを握りながら、名前はもじもじする。

「十代さんっ」
「ノーブラノーパンの痴女が浮遊しているなんて普通は思わねーから大丈夫だぜ!胸を張れよ!」
「ひ、酷い!」

名前はデュアル(魔力)で三角木馬とソリを動かした。

「直接会わなくていいのか?」
「はい。驚かせたくないので。それに、この時間だと寝ているかもしれませんし。枕もとにコッソリ置いてきます」
「俺は起きてると思うぜ」

会話もそこそこに目的地に着いた十代たち。
大好きな人へ、感謝の気持ちを伝える時がきた。彼女は深呼吸をして、高ぶる心をなだめる。そして緊張の面もちで中をのぞく。

「ああんっ!イくっ、イっちゃう!」

男と女、二つの体が一つに――そう、融合の真っ最中だった。
ちなみに、終始はしたない声を上げている女性が名前の主だ。

「名前。会わなくていいのか?」
「何でこのタイミングで言うんですか!?どう考えても無理ですよ!」

名前は手紙とプレゼントを玄関に置き、涙ながらに引き返した。この時十代の頭に『聖夜』と『性夜』の、くだらない同音異義語が浮かんだ。
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