蒼き女王

□4GAME
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柚咏side…


おはよう!今日は朝からママンに「ゴミだし命令」されてちょこっと不機嫌な上原柚咏でっす!


朝練が終わって、今は教室の窓際、しかも一番後ろの素晴らしい席でのんびり光合成中なの!


あっ…チェリーが来た!

と、同時に私はいつも思う。


月美チェリーという女はつくづく人気者である。


例えば、今。
彼女が朝クラスに入ってくると誰もが振り返る。


「チェリーちゃん!おはよー!宿題見せてー!」

「おはよ、加代ちゃん。
またやって来なかったの?」


まず自力で解いてからねと加代っちの額を小突く姿も眩しい。


男子が騒ぎ出し、チェリーが窓際の後ろから2番目の席(つまりあたしの前)に着いた途端、前の席のサッカー部部長が振り返る。


「月美さん、おはよう!」

「滝沢くん、おはよう。
今日も元気だね。」


そりゃあねぇ?青学の華が、しかも好きな女と朝の挨拶だけでも交わせたら嬉しいだろうよ。



こんな感じであたしの親友はクラスメイトに…というか、学校中の人気者です。


「…ゅえ、柚咏!!」


「うっわあぁぁ!!びっくりしたあ!!」


どうやらあたしを呼んでいたらしく、チェリーは苦笑。さらにクラスメイトも苦笑。

なんだよ!みんなして!!

「珍しいね、柚咏が考え事なんて。」

「何よ〜あたしは悩み多き乙女なんだから!」

「え〜?思ったらすぐ行動の柚咏が?」


クスクスと笑うチェリーも可愛い…なんて、あたしはオッサンかい!
氷帝の丸眼鏡やあるまいし。


「いいもーんだ!
で?何か用があったから呼んだんでしょ?」


問えば、頭を撫でられた。
なんだかチェリーには子供扱いされているようで微妙な心境だけど、
チェリーに撫でられるとなんだか幸せだからいい。


「柚咏は可愛いなぁ。
…そうだよ。実は、交流会の会計にミスがあった上になんかプラスしたいものがあるみたいで、立海に行かなきゃいけなくなった。」


チェリーはおっきなため息をつきながら辟易として言った。


「えっ…なんでそんなことになってんの?」
と問えば、昨日の夜のことを話してくれた。



「さすが、立海の三強…やることなすこと徹底的だね。」


まさか、チェリーの固定電話調べて、ゆーくん(あたしは悠利をこう呼ぶ)を調べるなんて…!

羨まし…ゴホンッ!
許すまじ!柳蓮二!


「そうなの。それでね…柚咏、一緒に立海に行ってくれない?」

「なんで??あたし会計なんて無理だよ。
数字苦手なの知ってるでしょ。」

だからあたしにも加代っちに見せる予定の宿題見せてよね。

なーんて考えてたら、目の前の超絶美人がびっくり発言をした。



「ユウを連れて行こうかと思ってるから…私一人じゃ目が届かないかもしれないし…」


ハイ?今なんて?


「ちょ、ちょっと待って!ゆーくん連れてったらマズいでしょ!いくら柳くんが言ったからって…」


チェリーがこんなこと言うなんて珍しい…

チェリーは普段、公私混同は絶対にしない。なのに他校に弟を連れて行くなんて…。


疑問を投げかけるとチェリーは困ったように笑った。


実を言うと…
あたしはチェリーの、この笑い方があまり好きじゃない。

だって…大人すぎて遠い。


「仕事があるの。新曲のレコーディングで、泊まり込み。
いつもなら国光の家に預けるんだけど…夫婦で旅行するらしくて…。
国光とおじいさまの2人になるのに悠利を預けるのは申し訳ないわ。

だったら、いっそのこと一緒に連れて行こうかと思って。」


チェリーはすっごくゆーくんを愛してる。
過保護だ。でも、チェリー曰わくこれでプラマイ0らしい。

自分は親なんだ、と言ったチェリーをあたしは今でも鮮明に覚えてる。

だから、何も言わないよ。何も…言えないよ。


「ゆーくんも立海行きたがってるんでしょ?
ならいいよ。予定もないし。
っていうか、あたしでいいの?」


「ありがとう。
国光は会計は私に一任してるし、家に早く帰ってほしいからね。
柚咏なら悠利のことよく知ってるし、弟妹(キョウダイ)いるから面倒見がいいから助かるの。」


「しょーがない!チェリーのために一肌脱ぎましょう!

その代わり!チェリーの新曲聴かせてっ!」


「えっ!?レコーディング来るの!?」


「ダメなんて言わせないよ!うちは一家で
歌手・Cherryのファンなんだから!」

うちの家族はチェリーの歌声が好きなの。
っていうか、チェリー自体が好きなの。
ちゃんとシングルもアルバムもバッチリ持ってるんだからっ!


でも、あたしの熱意に折れそうで折れないのがチェリー。


「でも、当日の夜までやって、次の日もやるのよ?
東京と神奈川の往復はさすがに……ハッ!柚咏、あんたまさか…!」


チェリーはやっと分かったらしい。
長い?付き合いなんだからもっと早く気付いてくれなきゃ!


「あったり前でしょ!
ホテルは3人部屋で決まりね☆」


「はぁ…やっぱり一緒に泊まるのね。ダメって言っても来るんでしょうから何も言わないわ。
4日後の金曜日から行くから、よろしくね。」


仕方ないと言った感じだけど、これは所謂
『対価交換』ってヤツじゃない?
あれ、『利害一致』?


どーでもいいけどマジで楽しみ!


「土曜日は部活休みだしっ!イエーイ!」


「言っとくけど!遊びに行くわけじゃないんだからね!」


チェリーの声なんて聞こえない!
幸せの金曜日!


カモン!ふらいでー!
(河村流)

って叫んだらチェリーは呆れた顔で

Come on!Friday!
でしょ。

だって!さすが帰国子女にして学年トップ!



「ねぇ、そう言えば…
手塚にはもう伝えた?」

罰の悪そうな顔をするチェリー。
やべ…ギュッてしたい!
べ、別にレズビアンな人ではないからっ!
女子は可愛い生き物が大好きなの!


「まだ。でもユウのことは内緒ね?」


まったく、いっつも人の心配ばっかり!
手塚に気ぃ使ったって損だね。うん、大損!



なーんて考えてたら…








『何が内緒なんだ?』



コレって…
ナイスタイミング?
バッドタイミング?
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