その男、○○につき注意せよ!

□その男、神出鬼没につき…
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朝の日常。
電車から降りて、当時7時開店11時閉店であったらしい全国チェーンの、とあるコンビニに足を運ぶ。

お目当ては缶コーヒーと新聞。

今日は1本早い電車に乗れたから、1時間目の講義までは時間がある。
さて、スポーツ紙にも手を伸ばしてみる。
広げて一面…最近、盛り上がりを見せているらしいサッカー界。
そしてそこに載る一際大きな写真。


……。

見なきゃ良かった。


まさかのまさか。
…最近、やたら関わりの深くなった男が写っていた。



『こ…この人!
ささサッカー選手だったの…!?』


「うん。やっぱ知らなかったんだ。」

「そりゃあ…あんな変な人が地元のサッカーせん、しゅ………」



あれ?あれれ?
私さ…今誰と話してる?


・・・バッ!


と、振り返ると…そこには新聞の写真と寸分違わぬ人物がいらっしゃった。


「よっ!変な人で悪かったね。」

「は…へ…?
あの…本当に、本物?」

「うん。ETUのサッカー選手の達海猛!そんで、チェリーの真下の階の住人!」


ニヒーッ!って笑われても困る。
確かに、最近"いろいろ大変なこと"があって
この達海…えっと、タケシ、さん?と関わることが多かった。

けどさ…まさかプロのサッカー選手って…この男が?


ナイナイ…と言い聞かせてもう一度新聞を見ると…

『ETU期待の星!達海猛が今度も決めた!奇跡の逆転ゴール!』


イヤだなぁ…疲れ目かもぉ〜…。はい。


信じます。信じますよ。
世の中には不思議なことがたくさんあるってことでしょ?


「お前さぁ〜なんか失礼なこと考えてない?」

「いっイヤだなぁ…。そんなわけないじゃないですか。
って、ていうかなんでここに?ここは浅草じゃないですよ。」


「なんでって、ランニング。2駅分くらい電車使うなよー。運動しないと体に悪いよ?」

「2駅って…10q弱はありますよ!殺す気ですか!?」

「たかが10qぐらいで音ぇあげんの?
だからパンツも落と…」

「あーあー!言わない約束でしょ!?しかも体力とそのこととは全く関係ないしっ!」


言わせまい。と大声を被せたのがそもそもの間違いだった。

ここはコンビニ。店員と客が「朝からうっせーんだよ」という心の声と共に痛い視線が私を突き刺す。

違います。違うんですっ!
悪いのはこの……って!


「ああっ!」


視界に入ったのは時計。
長い針がいつの間にかとんでもない数字を指している。
もう周りが殺気立った視線など感じない!


「なんだよー。びっくりす…」

「講義始まるっ!それじゃ達海さん!さよなら!」

「あ…おいー!」


ちくしょう!朝の至福のひとときを奪いやがって。
コーヒー買えなかった!経済新聞だって!

こんちくしょう!(二度目)
もっと早く会話を切るべきだった。


まったく!この人と会うと毎回ロクなことがない!


もし、講義に間に合わなかったらピンポンダッシュしてやるんだからっ!





そんな小さな仕返しを考えダッシュする私を見て

「なんだ。けっこー走れんじゃん。」

と、彼が楽しそうに笑っていたことなど知るよしもない。



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