その男、○○につき注意せよ!
□その男、変態につき…
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私と彼、達海さんとの出会いはお世辞にも良いものとは言えないものだった。
というのも、マンションで洗濯物を取り込もうとしたら風が吹いて、私が必死にバイトして買った勝負パンツ(淡いピンク地に赤いリボンのアクセント。お値段4000円なり。高かったんだぜ…)が真下の部屋へひらひら…
慌てて下を覗いたら、なんとタイミングの悪いことに私の勝負パンツは真下の部屋に住む男の手中に落ちたのだ。
今まで生きてきた21年間の中でこれほど恥ずかしいことがあっただろうか…いや、ない。
「す…スミマセン。」
意を決して下の住人である寝癖頭の男に声をかける。
しかし男はどこから声がするのか分かっていないようでキョロキョロと辺りを見回している。
「う、上ですっ!」
「うえ?あっ…」
呆けた顔に何かムカついた。
貴方の上からパンツが落ちて来たんだから、上に決まってんでしょうがっ!
というのは、私も大人ですから抑えましたよ。
「あの…その、それ…私のです……。」
「どれ?」
「いや…だから、貴方の手に持ってるそ、それです。」
「あぁ。パンツ。」
ハハッ…言っちまったぜ…。
あっ!ちょっ…!
パンツ広げて観察しないでよっ!
「いっ今から取りに行きます!506号室の方ですよね?」
「うん。」
こんなやり取りの後、私とその男――達海さんは初めて関わりを持った。
「はい、どーぞ。」
ニヒーッと笑う彼に私は努めて笑い顔を浮かべた。
「どうも…すみません…。」
最初はこの人、どっかで見たことあるなーと思っただけだった。
でも、とにかく一刻も早くパンツを取り返してこの人とはおさらばしたかった。
だって……
「うーん。あのさぁ、」
「は…はいっ?」
「俺的には黒がいいと思う。」
「えっ…?」
「だーかーらーピンクもいいけど黒の方がそそる…」
「失礼しましたっ!」
変人とは関わりたくないし。
真剣な顔して何言うかと思えば…普通自分の好みの色なんて言うかね?
こんな人、もう二度とごめんだね。
でも人生って甘くない。
数日後。
関わりたくない、と思うほど
「あっ!ピンクのパンツ…!」
会ってしまったりするのだ。
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