☆日一小説2☆
□知っては、いけなかった
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『出会えてよかった』
―…なんて、本当だったのかな。
その日はやたらと晴れた良い天気で、思わず外で昼寝でもしてしまいそうな…。
無事にルキアを助けられて、何故か知らないけどいつの間にか恩人扱いされていて…正直今の扱いにはまだ慣れてないぐらい。
怪我もだいぶ治ってきて、卯ノ花さんに外出の許可が下りたから久々の外。
四番隊の隊士たちが付き添うって言ってくれたけど断った。
(まだまだ怪我人多いいしなぁ…。)
俺なんかといちゃ他の奴らの治療ができないし…なにより他人と一緒だと落ち着かないし。
…で、どんな思考でいたのか分かんねぇけど、何故か俺は木の上で昼寝をしていた。特に意味はない。…考えるとしたら風が気持ちいいとか、ひとりになれるとかだろうけど。
…とにかく、そんな考えで寝ていた。
(…現世と変わんねぇじゃんか。)
あんなにも騒がしかったのに、今は着々と確実に復興してきている…。ここの静けさに、落ち着きを感じるのは何故だろう?
そんな自分がおかしくてクスッ、と笑ってみれば、春の匂いが鼻をかすめた。
寝返りを打とおと少し身体を動かした瞬間…身体を滑らせて地面へ…。でも見えたのは珍しい髪色の銀色。
「ぅわー!!!退いてくれぇぇぇ!!」
ドサッ!!!!
時すでに遅し。見事俺の身体はそいつの真上に落ちた。落ちたときの痛みが少しだったのは、こいつのおかげだろう。
「痛っ…」
「あっ、ごめん!!!まじでごめんな!!!。」
とりあえず必至に謝ろう。そう脳が結果をだしたのか、俺はそいつに謝罪の言葉を述べた。暫くするとそいつは頭をさすりながら俺を睨む。
「てめぇな…木の上で何してやがる。」
「えっ、えっと〜…」
ヤバい、こいつから『霊気』じゃなくて『冷気』が出てるように見えるのは俺の気のせいじゃねぇよな…!?
「その…昼寝してて、寝返りうったら落ちて…。」
「………。」
あぁーーー!!!!完全に呆れられた!!この沈黙で分かる!!このまま現世に帰りt
「…プッ。」
「え…?」
「昼寝しててって、お前は餓鬼かよ…。」
さっきとは真逆に、少し緩んだ口元には若干の笑みが浮かべられていた。何故かその笑みにドキッ、と胸が高鳴った。息が苦しくて、何かに駆られたような感覚が全身を襲った。
「お前、名前は?」
「え?あ、黒崎一護…。」
「お前が噂の黒崎か。俺は十番隊隊長、日番谷冬獅郎だ。」
「た、隊長なのか!?ごめん知らなくて…」
「気にするな。…っと、話しすぎたな、副官がサボるから行くな?」
「あぁ…じっ、じゃあな。冬獅郎!!」
大きな声でそう名前を呼ぶと、一瞬驚いたように見せたけど、次に見せた表情はとても穏やかで…。
「あぁ、またな黒崎。」
小さくなっていく影をひたすらに見つめ、一際強い風が俺の髪を乱すけど、そんなことは全然気にならなくて…。ただ身体中に響く胸の鼓動だけがその場にうるさく木霊していった―…。