☆日一小説2☆
□そのままの、君でいて
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ネタバレです。死神の力が消失して架空の1年半を書いてみた
風に流されるように
さらさらと力が抜けていく…、
心地の良い感覚とは、裏腹に
心にぽっかりと、穴があいた気がした
最後の戦いから、約1年…
斬月が俺に教えた最後の月牙天衝を放った時のことは、今もこの手の感覚に生々しく焼き付いている。
その凄まじい威力の代償と言わんばかりに、死神の力は…俺の元から消えていった。
何もかも、戻された日常
頭を過るあいつらの姿も、分からない
悲痛な魂の叫びすら、俺にはもう聞こえない
…大好きな、冬獅郎の声さえも
「じゃあね、一護」
あんな戦いに巻き込んだのに、水色は普通に俺に接してくれる。水色だけじゃない。啓吾やたつきも、みんな俺のことを咎めたりはしなかった。
それは優しさから来る感情なんだろう
…それが逆に、俺には重すぎて
「じゃあな、水色」
帰り道でさえ、それは思う。
背中を照らす夕日は、俺の影を伸ばし大きく見せようとする。結局俺はまた1人だと…、思うしかない。
冬獅郎と歩いたこの道は、やけに短く感じたのは…なぜだろう?
温かい笑顔を見せたあの日はもう戻らない
並んで歩くことも好きだったけど、後ろから背中を見ることも好きだったよ
「冬獅郎」
果てなく広がるこの空の向こうには、変わらず尸魂界があって、あいつがいる。
手を伸ばしても届くはずがないのに
どうして落ち着くのだろう
「…なんだか、遠いいよ」
キュッと伸ばした手を握る
お前なら、こんな情けない俺を叱るか?
行き場のないこの想いを…お前なら、分かってくれる?
「…会いたい、会いてぇよ冬獅郎」
また、涙が頬から零れ落ちる
今は無理だから
俺にまだ誰かを護れることができて、そいつを護ることができたら
変わらない俺の大好きな笑顔で
…迎えてほしい
大好きな、その腕で