☆日一小説2☆
□筋書きだって。
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ノートの端の方に書いてみる。
それは、何か新しいものに触れていくみたいに
純粋に穏やかな気分で
でも、どうせ届かないから、こうして書いては消して、書いては消してを繰り返す。
途端に書いた言葉が恥ずかしすぎて、頬が熱くなるのを感じたから…、
そっと、ノートを閉じた。
「一護ー、さっき何ノートに書いてたんだぁ?」
授業が終わってから、啓吾が興味津々に聞いてきた。どうやら先ほどの俺を見ていたらしい。
めんどくさいなと思う俺の本音が分かったのか、啓吾は眉間に皺を寄せ手を豪快に動かした。
「黙々と書いてた奴が急に赤くなって消しゴムで消しだしたら誰でも気になるっての!!」
「…何でもねぇよ、それより俺今日1人で帰るから。」
そう言うと、机に座り直す。未だに俺の横で酷いだの教えろだのギャアギャア騒ぐ啓吾は完璧無視。
唯でさえ今頭の中がグチャグチャなのに、俺はこいつの相手をしていられない。
つい最近、俺は恋をした。
瀞霊廷に住む、護艇十三隊の隊長に…。
きっかけなんて無い、ただ一度だけ廊下ですれ違った時…胸が高鳴って思わず振り向いたくらい。それは衝撃的だった。
もう一度会いたくて、何度も訪れたけど会えなくて。…もしもこの世界に神がいるのなら、俺のあの巡り合いも結局運命で、全ては筋書き通りだったんだ、きっと。
「都合良く考えるのだな、貴様は。」
俺の部屋の椅子にドンと座るルキアに呆れられながら言われた。これでも、ルキアは俺の唯一無二の理解者。何だかんだ言って、俺の相談は積極的に聞いてくれている。
「貴様の言葉には矛盾を感じる。」
「たとえば…どんな?」
「今の現状に苛立ちを覚えているのも事実、想いを早く伝えてしまいたい…。だがふとたまに、自分が本当にそれを望んでいるのか…不安に感じているのであろう?」
「……、」
「…こうして悩んでいる間に、日番谷隊長を誰かに盗られてしまうぞ。」
分かっている、そんなこと。
だけど…やっぱり踏み出せない。自分には荷が重すぎると断念してしまう。
こんなことは自分が一番許せないけど、一歩踏み出すのにつれて、段々その勇気と決心が俺から消し去っていくんだ。
「…ありがとな、ルキア。」
「礼などいらん。今度白玉あんみつを奢ってもらうからな」
「狽ネ、まじかよ!!」
いつまでも悩んでいたって、何にも変わらない。変われないんだ。だったら…、少しだけ勇気を出してみた方が…いいんだよな。