☆パラレル小説〜旦〜☆
□月の雫、太陽の欠片
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カララララ―…
風車がクルクルと遊ぶように舞う
パシャン、と赤い尾びれをはためかせた金魚たちが水槽の中で悠々と泳ぐ
浴衣をはためかせるように。長く垂れこんだ髪に映えるかんざしが、歩くことによって舞うように揺れ動く―…
空に咲く大輪の花を見上げる人々の顔は、輝きに満ち溢れている…。
隣に愛しい人がいれば、尚更―…
「夏、祭り…?」
キョトン、と琥珀色の瞳を友人たちに向ける学年のアイドル、黒崎一護。それだけでキュン、と胸が高鳴ってしまうクラスメイト…。そのなかのリーダー格の友人が説明をし始める。
「そ♪、今週の土曜にあるだろ?みんなで行くんだけど、お前も行かねぇ?」
一護が口を開きかけたとき、それはまた別の声によってかき消された。
「「「「「キヤァァァァァァァァァァァァァ!!!!」」」」」
振り返ると、廊下を埋めんばかりと集まる女子の大群…。その目的の先に、珍しい色彩が目に入る。
「あの女子の数はなんだ??」
可愛らしく首を傾げ友人に問うが、その眉間に若干の呆れと嫌悪が浮かぶ。
「あぁ、どうせまた日番谷サマのお通りだろ?全く飽きないよなぁ。」
「……。」
『日番谷』という名に聞き覚えのあるのを一護は思い出す。
確かに日番谷はモテる。外国の血筋が入ってそうな顔立ち。冷めた翡翠色の瞳と、その性分から同じ生徒たちからも人目置かれ、人望が厚く教師や女子からの支持が高い…。と、ここまでが生徒たちが知っている日番谷冬獅郎という人物の情報。それは一護も同じだ。
大変だなぁ〜。と同情に近いコメントをする一護に、友人の口がまた開く。
「んでさ、夏祭り。一護は来れんのか?」
「うーん…。まぁ考えとくよ。」
「おぅ、絶対だかんな!!!」
そんな話をしている一護たちの横を、日番谷を中心に、女子たちが通る。
風鈴が鳴る音とともに、誰かの息を呑むような吐息が、夏風にのる―…
運命の歯車が、今動き出す。