☆日一小説2☆

□知っては、いけなかった
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尸霊廷に来て二週間。このぐらいになるとみんなの扱いも客人扱いから友人扱いに変わってくる。俺にはその方が合っているし、…なにより今まで行ったことの無い場所に連れて行ってくれることが俺には一番嬉しかった。




「…一護、最近すいぶん機嫌がいいな。」




で、今はルキアと恋次に誘われて『甘味処』にいる訳だけど…着いてそうそう何をいいだすんだこの女は。




「別にそんなことねぇよ。」




「嘘をつけ!!ここ3日のお前はボ〜ッとしてロクに私の話を聞いておらんだろ!!」





つくづく、女は勘が鋭いと思わされる。3日とは丁度俺が冬獅郎に会った日でもあり、…俺が木から落ちた日でもある。




「何を根拠にそんなこと言ってんだよ、今日だってお前に言われたからここにいんだろ。」



「たわけ!!!私が言っているのは隊舎にいるときの話だ。キョロキョロと周りを気にしおって…」



「あ、すいませーん。特製蜜豆にこの白玉つけてくださーい。」




「貴様…わざとしているだろ…!!」




適当に聞いてても同じ話を何度も何度もしてやがるからだぜルキア。とか思ってチラッと覗くとむくれながら「私はこれに抹茶を付けてくれ!!」とか言ってやがるし…。女の思考は良くわかんねぇ。
すると今度は恋次がタイ焼きを食いながら俺を見上げてきた。




「んでもよ、本当最近機嫌いいのはたしかだろ?」



「……。」




なにも言えないのは自分でも良く分からないっていうことなのか。あんな気持ちは初めてだったし、初対面の奴を相手にあんなに話すのも初めてだった。…別に人見知りが激しいわけでもない。ただ、あそこまで人と話してて胸が高鳴ったことは一度も無かったから。




「まー…あんまり自分でもよく分かんないんだよな…。」



「つまり無意識に機嫌がいいと、」



「幸せなヤローだな。」





お前ら、喧嘩売ってんのか…?
そう言おうと思った口は、運ばれてきた特製蜜豆によってかき消された。男とは言え、俺も甘いものは大好きだ。現世の店には無いほどよい甘さが口いっぱいに広がる。




(んー幸せ。)





あいつは甘いものは好きなのだろうか?
ふとそんな疑問が脳裏をよぎる。…いや、それ以前にまた会えるのだろうか…?あの日のように笑い合いながら話すことができるのだろうか…。そう思い始めていたら口の中が空っぽになったのも忘れてしまいそうだ。それほど、あいつの存在は俺の中に深く刻みつけられていた。





(…会いてぇな。)






そんな切な思いがすぐに叶うなんて…。運命としか言いようが無いと思った。
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