★小ネタ☆
□大罪だとしても
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現世、空座町上空
技術開発局が現世にて、破面の霊圧を確認したのはまだ数分だ。
そうと関わらず、残る破面はただ1人。
大罪人、藍染惣右介にNo.6の称号を与えられた破面。
多勢に無勢…
浅葱色の髪が風に靡き、肩は浅く上下に揺れている。
もう限界なのだ
頭部から出た鮮血が頬を伝って滴り落ちる。
「終わりだ、破面…!」
そう言い放つと、十番隊隊長日番谷冬獅郎は矛先を構え、空座町を真下に宙を蹴った。
誰もが安堵の息を漏らす
刀を鞘に納める、その時だった。
「殺さないでくれッ!!」
不意に聞き慣れた声がその場に響き渡る。
勢いよく視線を聞こえた方向に向ける…、
「黒、崎…?」
日番谷の数メートル先に立ちはだかる死神代行。
蜂蜜色とも言える瞳を、不安気に揺らしながら両腕を広げこちらを向いている。
こちらを、向いている
敵である筈の者に背を向けているのだ。
「頼む…!!殺さないでくれっ…」
驚愕に目を張る死神たち
切りかかろうとした日番谷でさえ、今は刀を下に向けている。
喉が渇き
未だ混乱する頭をなんとか叱責し、恐る恐る口を開く。
「どういうことだい?一護くん…」
他の死神たちが聞きたかったことを、浮竹が咎める事なく尋ねれば、一護は一度ビクッと肩を揺らし浮竹を見た。
「もうっ、いいだろ…コイツは、他の破面とは違うんだ…ッ!!」
「どこが違うんだよ、破面なんて皆同じだろッ…!」
「阿散井くん…」
「答えろ一護!!てめぇは何でその破面を庇ってやがるッ!?」
やるせないように唇の端を噛む一護。
阿散井の言っていることに間違いは決して無い。むしろ正論だ。
だからこそ、誰も何も言えなかった。
静まり返る空気を切り裂くように沈黙を破る、破面。
「コイツは俺のだッ…!」
「っ!グリムジョーッ!!」
浅い呼吸を繰り返しながら絶えず言い放つ。
吐き捨てるようで、どこか慈しむような素振りで話す破面と死神代行に、誰もが察した。
この2人は
禁忌を犯しながらも
心の底から求め合い
愛し合っているのだと
「誰にも渡さねェ…、テメェ等死神にも、藍染にもッ…!!」
片腕を一護を庇うように伸ばし、突き刺さるような視線を死神達に向ける様は、まさに豹。
そこまでして抗う理由など破面にあるのだろうか
所詮藍染の手駒に過ぎないと、彼等自身が一番分かっている筈なのに。
心や思想、感情など一切持たない筈の破面が
何故、あんなにも人を慈しむ瞳(め)を向けることが出来るのだろう
…何故、こうも虚無感が心を支配するのだろうか
「一つ問いたい、破面」
「…何だ」
「…お前は、何故黒崎に執着する」
「…大切だからに、決まってんだろ」
日番谷を不審な眼差しで射抜く水浅葱色の瞳。
「…そうか」
数秒の出来事。
真っ直ぐに絡み合う視線に日番谷は怯まなかった。
ただ、ショックだった。
水浅葱色の髪の破面の後ろに、泣きそうな表情でいる死神代行の姿が。
「…引き上げるぞ」
「ッ!?、日番谷隊長何をっ…!!」
「その破面にこれ以上俺達と戦える霊圧も価値も無い。格隊の者に連絡を取り、後日また出直す。」
淡々とした態度で令を下す日番谷に、目を引く死神達。だが隊長命令は絶対、それを害する理由など、誰も口には出せなかった。
同時に、誰もが気付いた
日番谷が己の拳を力強く握り締めていたことに。
「冬獅郎、なんでッ…!」
「……お前に、護るものが出来たからだ」
振り向いた顔が、あまりにも切な過ぎて酷く美しい。ハッと、一護は思い出す
日番谷にも、護るべき者がいること。藍染の一件で唯一心も体も病んでしまった健気な幼なじみ。
言葉にせずとも分かった
強くなれ
そして護れ
お前の大切な存在を
悲痛な叫びのように
心臓に直接届いた感覚に
一護は力強く頷いた。
「冬獅郎、ありがとう…!」
既に穿界門を開き、尸霊廷に帰ろうとする日番谷に一護は叫ぶ。
自分より
遥に小さい背中が
何故かものすごく大きく見えて
同時にたくさんのものを
背負っていることに気付かされた
…閉じる瞬間、
日番谷は少しだけ振り向き酷く、哀しげに微笑んだ。
END