ハニー、サイケデリック
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義理チョコ、毎年この時期になると配らなければならないもの。
そもそも義理ってなんだ?
辞書をひいてみたら、対人関係や社会において守るべき道理、とあった。
ああ、つまりはこの世のなかでうまく生きていくために振りまかなければならない愛想か。
「ねーチョコはー?」
「は?んなもんないよ、甘ったれるなよ?」
「今日なんの日か知ってる?」
「司祭ヴァレンティノが処刑された日?」
「……だれだよばれんてぃーって」
「愛することは素晴らしいって広めたひとだよ」
「知るかよ」
枕に顔を埋めて項垂れる直人のあたまに、今日のために買ったものを放り投げる。
「‥いて」
「仕方ないなあ、ほら、ドラゴンボール。7つ集まるといいね」
ガチャガチャでとったドラゴンボール。(ゴム製100円)
ドラゴンボール好きな直人のために、わざわざ子どもたちに囲まれながらガチャガチャしてきた。
こいつとの関係を保つために、振りまいた愛想がこれか。
「すげーうれしい」
まあ、喜んでるみたいだし、こいつともまあ変わらず一緒にいるんだろうな。
そんなことを思った、2月14日の夜。
司祭が愛を貫かなかったらみんな恋をすることをやめてしまったかもしれない。