視界鮮明
□もて余した想い
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人が恋に落ちるのに、季節は関係あるのだろうか。
夏の恋は激しく。
冬の恋は切ない。
そんな風にトモダチは言うけど、春に落ちた恋だって、激しいし、切ない。
ふんわり花びらで風が色づく季節に生まれた恋は、樹々の枝が葉を広げるのと同じ速さで大きくなった。
膨らんだ想いが、眩しい陽射しの中で熱を帯び、鈴虫の涼やかな音色を真似て鳴り響くのを聞いた。
しんと静まる夜は、憂鬱さを伴ってあたしに巻きつき、ため息をつかせる。
春生まれの恋は、儚く見せて、実は一番したたかだ。