視界鮮明

□葉擦れの音
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桜の季節が終わると、木々は成長の時期を迎える。

若い木の芽は緑浅く、柔らかな質感が伸びる枝に小さく手を広げて散る。

「はぁ。」

校舎の二階東側の角の教室で、あたしはため息をついた。

最初の席替えで窓側が当たったのは良かったけど、あたし達の教室は校庭の隅に植えられた胡桃の木のおかげで見晴らしが良くない。

そりゃあ、疲れ目に緑は良いと聞くし、爽やかな風に揺れる葉の生い茂った枝を見てると和むけど、全然楽しくない。

隣のクラスからは校庭だって、渡り廊下だって見えるのに。

…あたしが外が見たいのには理由がある。

ここから…、彼が見える。
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