視界鮮明

□忍び雨 前編
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しとしと、しとしと。
じんわりと雨が降る。

霧雨に似た雨は、音を消し、窓から見える景色の色を奪う。

ぼんやり眺める窓の外は、雨に塗り込められている。

ただ、勢い良く育つ胡桃の葉だけが雨粒を乗せて緑を増し、どんよりと重くなりがちな風景に色を添えていた。

「高原、たぁかぁはぁらぁっ。」

背中から聞こえる囁きに、現実に引き戻された。
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