視界鮮明
□忍び雨 後編
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後10分。
そう言った彼女は、のんびりとティーカップを片付け、店の商品の位置を直す。
あたしにも、「良かったら、他の絵本も見てね。」と絵本の並らぶ本棚を示して、後は仕事に戻っていった。
どうやら、あたし達は人を待っているらしく、その人物は後10分で現れるらしい。
よくわからない状況に微かに不安も覚えたけど、10分はあっという間で、店に並ぶ色鮮やかな小物に気をとられているうちに過ぎていった。
「来たわね。」
足音に気づいたのは彼女だった。
急ぐわけでもなく、踏みしめるようにゆっくりと足音が近づいてくる。