霧の城

□霧の魔物
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「霧の魔物はなぁ、森の奥の湖にいるんだよ。」

決まった語り口に、ハヤは穏やかな眼差しで炎を見つめる。

「森の奥って?」

合いの手に近い質問も、二人の間では決まったやり取りになっている。

「村の北側から、真っ直ぐ山を目指して森を進むとな、湖が現れるのよぉ。」

火にかざした手を時々揉んで、じさまは話に呑まれていく。

その様子を、ハヤは興味深気に見て、ゆっくりと手元に視線を戻した。

この昔話を始めると、じさまは決まって酒に酔ったようになる。
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