君の
□第一章
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一般的には知れ渡っていない組織
特殊警察部隊
法律で裁くことのできない重罪人・掟を破った裏世界の人間を裁き、鉄壁の守りを誇る
監獄へと収監する、秘密組織。
組織の若きトップ・佐伯 壱(さえき いち)は、その監獄へと訪れていた。
30歳という驚きの早さでトップに立ったその男は、大人の男の色気漂う顔立ちで、どちらかというとヤのつく職業の人間にみえた。
×××
コッ…コッ…
辺りに足音を響かせながら、俺はある部屋へと進む。
暫く歩くと、一際大きな鉄製の扉が目の前に現れる。
外からでも分かるほど、中は随分と騒がしいようだ。
中の様子を想像し、少し憂鬱な気分になる。
扉をそっと開ける。
「やっちまえぇぇ!!」
「ぎゃははっ!」
「ぶっ殺せぇっっ!!!」
食堂の中心を取り囲むようにして、囚人達が騒ぎ立てていて。
弱いものから死んでいく、まさに弱肉強食の世界。喧嘩も殺しも日常茶飯事で、正に今もその途中なのだろう。
俺に気がついていなかったため、そっとそちらへと近づく。
中心に居たのは二人の男たち。
どちらもがタイがよく、殴り合いをしていた。
「クソ野郎が!」
「死に晒せ!!」
「 黙れ 」
低く、しかし全体へ響くように一言だけ発する。
一瞬で辺りは静かになるが、俺の存在に気がつくと、ざわめきが起こる。
『なんで此処に…』
『なんかあんのか…?』
囁き声が広がるが、それを気にせず言葉を続ける。
「神灯 荊はどこだ」
俺が此処へ訪れた理由である人物。
この監獄でもっとも若く、そして、
最も可笑しな人間。