ぐちゃぐちゃ

□emotional
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いつだってそう、あたしは。


小さい頃からそうだった。
影で泣いて、表で強がって。

今だって、ほら。
また影で、一人で、泣いてる。


*emotional――感情的な



ここ一週間ほどあたしは一人で溜息をついて過ごしている。
人生初の失恋。ここまで好きになったのは初めてってくらい大好きになって撃沈。悲しい。
あてつけじゃないけど毎日泣いてる。夜になると寂しくて悲しくて、なんか涙が出てくる。

――リサーナって言ったっけ、あの子。
ナツが好きなコで、今はもういないらしい子。
会ったことないけどきっとすごく優しくていい子だったんだろうな。みんなの話聞いててなんとなくわかる。あたしなんかとは違って、優しくて、気が利いて、それで、…ナツにも好かれて。
―――ずるいよ。
別にリサーナのことを悪く言いたい訳じゃない。けどあふれてくるのは“ずるい”。
もう近くにいないのに、それでもまだナツに想わせられるなんて、ずるい。
わかってる、これはただの嫉妬。あたし性格悪い。
ただ勝手に言ってるだけなんて本当に嫌な子。でも悲しいんだよ。ナツのそばにいたかったんだよ。今だってナツはあたしと変わらず接してくれてるけど、やっぱり気まずいし、ナツもそう感じてるだろう。
そばにいたかった。ナツの恋人として、一緒にいたかった。でももう駄目なんだよね。きっぱりフラれちゃったんだし。

あーあ、どうしても、

「無理なのかなー」
「何がだよ」
「グ、グレイ!?」
「そんなびっくりしなくてもいいじゃねぇか…」
「あ、あぁうん、ごめんなさい…」
「ま、おおかたナツのことなんだろーけど」
「…別に。あんなのもう、」
「嘘つくなよ。二人見てりゃわかる。レビィも心配してたぞ」
「…そっか、レビィちゃんには相談のってもらったからなぁ」
「…まだ好きなんだろ」
「ぜんぜん」

嘘。まだ好き。大好き。好きなんだもん。しょうがないじゃない。好きって気持ちを諦めることなんてできない、そう思っていてももう無理だって考えてる。あぁ、なんて未練がましいのよ、あたし。

「リサーナが羨ましい」
「…リサーナ?」
「グレイは知ってるのよね、リサーナのこと」
「あぁ、優しくてイイ奴だった。…昔っからナツと仲良くて、な」
「追い込むようなこと言わないでくれる」
「多分あいつはお前にリサーナを重ねてる」
「…そう」
「ま、あんな馬鹿の考えてることなんて知らねーがな」
「あんた励ましにきたのか馬鹿にしにきたのかどっちよ」
「優しい俺はルーシィさんを励ましにきたつもりだったんですけどねー」
「そう、じゃああんた女の子の扱いヘッタクソなんじゃないかしら」
「うわ傷付く」
「嘘ついてんじゃないわよ服を着ろ変態」
「なぁっ!」
「でも、ま。ありがとね」
「おう。頑張れ」


そう言ってグレイはまた戻って行った。なんだかんだ言って優しいのよねー。…頑張れ、か。嬉しいんだけど何を頑張ればいいんだろうね。それすらもうわかんない。ナツに告白する前のあたしは、ナツにどう接していたんだろう。どうやって、ナツと会話していたんだろう。まさか恋愛小説やなんかでよくある気持ちに自分がなるなんて思いもしなかったや。どうすればあたしは前みたいな関係に戻れる?あたしはナツに「振られてもこれまでと同じ仲間だ」と言った。それなのに、なんで、なんで。
なんで前みたいにできないの。


「…ルーシィ」
「!、……ナツ…?」








今のままじゃだめだと思った。

前はこんなに辛くなかった。むしろルーシィといると楽だった。それくらい心を許してた。それなのに、ルーシィが俺と一緒にいたいと言ってくれたのに、俺は自分の気持ちの判断を間違えた。これまでとおなじようになんて出来るわけなかった。
結果的にそれが俺もルーシィも苦しむことになろうと、ルーシィとまた話して、俺の気持ちを伝えたかった。
けどやっぱりリサーナが出てくるんだ。リサーナのことが好きだったのは本当。リサーナがいなくなって、もう会えないんだと思って、そしたら今でも少し悲しいし、けどルーシィだっていなくなったら俺は悲しくて――。

「わっかんねぇ……」

ルーシィに告白されて気付いた。俺はルーシィが好きだと。だけど答えを伝えたときにはもう遅くて、けどずっと頭んなかルーシィで埋まってて。
ルーシィ、ルーシィルーシィルーシィルーシィ。
やっぱ好きなんだ。好きだけど迷ってるんだ。リサーナのことが忘れられないんじゃない。てゆーかリサーナのことをいつまでも引きずっていたらそれこそあいつに怒られるだろうし。
ただ、ルーシィにリサーナのことを話しても、ルーシィは認めてくれるだろうか。ルーシィは俺のことを信じてくれるだろうか。全力で葛藤。
でも気付いたんだ。俺らしくねぇ。当たって砕けろ、だろ?後先考えないで突っ走るのがいいところ、だろ?

もう考えるのはやめた。考える、なんて俺には合わねぇ。考えすぎは間違った判断のもと!そう考えて、俺はルーシィのもとへ歩きだした。




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