俺アリス
□この手を離してしまえば永遠に会えない気がした
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懐かしい夢を見た。
それは、真琴とアリスの体がまだ入れ替わっている頃の過去。
今はお互いに体が戻って、二人して好きなようにやっているがあの頃はそうもいかなかった。
真琴は男としての感覚が強かったのか、トイレやお風呂は男子の方にいくし、モンスターと戦うために強くなると言ってトレーニングをすると言って、アリスに私の体を傷つけないでよと怒られてからは、トレーニングをするとは言わなくなった。
けれど、それらを除いても真琴が一番手のかからない事は確かだった。
そして、この感情を持ったのもそれくらい昔の事だった。
お互いの体が戻ってからは俺は自分の気持ちがはっきりとわかった。
好きなのは真琴だ。
真琴が笑えば嬉しかったし、泣いてしまったら困りながらも慰めたし、文句も言わずに楽しい旅だった。
けれど、別れの日は唐突に来る。
真琴はゲートに吸い込まれる様に体が消えていく。
嫌だ。
この気持ちを伝えないままで消えてしまうのは嫌だ。
そんな思いから真琴の手を強く引っ張った。
けれど、真琴は笑いながら「どうしたんだよ?」と聞いてくる。
なんで、別れるのにお前は笑顔なんだよ。
寂しくないのかよ。
色々な感情が入り交じって、真琴の手を離してしまう。
俺はこんなにお前の事を思ってるのに、お前は違うのかよ。
真琴がゲートに吸い込まれる。
それが、最後。
最後の真琴は笑顔で別れてしまった。
…まだ、何も伝えてないのに。
…まだ、約束だって果たしてないのに。
綺麗なこの世界を見せてやる、って約束したのに。
後悔が後から波のようにやってきて、俺の心は張り裂けそうだ。
白兎「…どうして、いなくなったんだよ…」
ポツリと呟いた言葉は、誰に届くことなく真っ白な空間で俺はうなだれる。
そんな俺の頭を誰かが撫でる。
小さくて、暖かくて、守りたいって思ったこの手は…。
思わずその手を俺の方に引き寄せる。
真琴「うわっ!」
驚いた真琴の声がする。
白兎「…真琴…」
俺はそんな事を無視して、真琴の体を抱き締める。
ギュウと強く、けれども骨を折らない程度に。
真琴の体は細くて、強い力をかけてしまえば壊れてしまいそうだったから。
真琴は暫くなすがままになっていたが、片方の手で俺の頭を撫でて、もう一方の手で俺の背中を叩く。
優しい力で、ポンポンと小さな子供をあやすみたいに。
その行動は、真琴の優しさに触れたみたいで泣きそうになる。
真琴「怖い夢でも見たのか?」
少し笑いながら言っている真琴の言葉に、ん?と思う。
夢?
そうだ、さっきのは夢だ。
…じゃあ、今は?
俺は目を開いた。
そこは真琴の胸元で、上を見ると真琴の顔。
…。
……。
………ん?
真琴「おそようだな。白ウサギ」
ニコリ、笑った真琴に俺は顔を赤くする。
好きな奴の笑みを見て、嬉しくない奴なんていないだろ。
…と、いうか今まで俺は何をやっていたのだろう。
かなり恥ずかしい事をやった気がする。
いや、現在進行形だな。
真琴を抱き締めて、真琴は俺の頭を撫でる。
…。
状況を整理しよう。
昔の事を思い出して、真琴が帰った、ってなったけど、誰かが俺の頭を撫でるから、真琴だって思って、真琴がいる事を確かめたくて真琴の腕をひっぱたら体温を感じて、真琴の言葉に、違和感を感じたから目を開いたら真琴が目の前にいた。
白兎「…何処までが夢だったんだ?」
トクン、トクン、真琴の心臓の音がとても心地が良くて目を閉じる。
真琴「うおっ!って言ったのは現実だ。かなりビックリしたんだからな」
そう言いながらも頭を撫でる手を止めないのは真琴なりの優しさなのだろうか。
白兎「夢でよかった…」
俺は改めて真琴を抱き締めた。
(帰る前に絶対に言っておきたい言葉があるんだ)
(俺はお前が好きなんだ)