□愛してる
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「おーいダムー」
「どうした」
ノックも早々にドアを開け部屋に入った。
ダムは椅子に腰掛けライフルの手入れをしている様で、こちらに視線を合わせず返事をする。
作業しながらだからか、普段より少し声のトーンは低く、無愛想だ。
「いや、部屋居ても退屈だったからさ」
そう言ってベッドにどかっと腰掛ける真琴。
整った顔。こんな顔、自分の妹が読んでる様な少女漫画の世界にしかいないと思っていた。
けれど、これは現実で、目の前に居るダムは王子様という表現がぴったりな綺麗な顔だ。
「なぁーつまんねーから遊ぼうぜ」
「・・・」
「神経衰弱とか!」
「・・・後で良ければ」
何処か面倒臭そうに発せられた溜め息混じりの言葉。
ライフルの手入れが大事なのはよく分かってるけど、もう少し構ってくれたって良いのになと思った真琴はダムの袖を引っ張った。
「なぁーなぁー」
「真琴・・・」
作業を中断し、ライフルをテーブルに置く。
ダムはこちらに向き直って真琴を真っ直ぐに見つめてくる。
いつだって誰とだって、人の目を真っ直ぐに見て話をしてくれるダム。真琴はそんなダムの真面目で優しい所が大好きだった。
「真琴」
「ん?なんだ?」


「少し黙っててくれないか?」


「え?」
胸がズキンと痛んだ。
ダムがさらっとキツイ事を言うのはいつもの事なのに、何故か胸が酷く痛む。
「あ、御免・・・ウザかったか?」
「ああ、せめて手入れが終わってからなら、まだ良いんだが・・・今ははっきり言って邪魔だ」
「・・・っ・・・・」
特に怒る訳でも呆れる訳でも無く、真顔で言うダム。気まずいと言った雰囲気も一切無く、ダムとしては本当になんて事ない言葉のつもりなのだろう。
真琴自身も今までにだってダムからキツイ事をそれなりに言われてきたし、ある程度免疫もついてきたつもりだった。
それが、どうしてこんなに苦しく痛いのだろう。
「そ、そっか・・・悪かったなっ・・・ははっ。じゃあ俺、部屋戻るわっ」
「ああ、悪いな」
ふっと微笑むダム。本当に悪気が無い事が分かる。
無自覚じゃどう文句を言ったら言いかも分からない。
真琴はやり場の無い悲しみを抱えたままにダムの部屋を後にした。
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