□紅茶の夢渡り
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俺は真っ暗な夜道を一人で歩いていた。

「あぁ〜あ、昼間に売られていれば今出掛けることもなかったのにな。」

ぶつぶつと独り言の文句を言って店へと急ぐ。

夜道は危険だ、と白うさぎに注意されたが今日だけは仕方ない。

あれはこの時間に行かないと売り切れてしまう。
それだけ人気な商品なのだ。


店に着くとそこには長い行列が出来ていた。

「うわぁ…もうこんなに並んでるよ。俺、買えるかな。」

あまりの人の多さに少し不安になったが、しばらく並んで待っていたら順番が来て、なんとか買うことが出来た。


こんな夜中に買いに来た物。
それは、月に一度数量限定で販売されるという"紅茶葉"だ。

これは以前帽子屋に淹れてもらった事がある紅茶の葉で、とても美味しくて俺はこの紅茶葉が売っている所を訊ねた事がある。

「これは俺の好きな紅茶の中の一つなんだが…なかなか入手が難しくてな。」

販売場所などは教えてもらえなかったが紅茶名を聞いて自分で街などに聞き込みなどをした。

やっとの事で得た情報のおかげで、俺はその紅茶葉を手に入れることが出来た。

「…やった。これで帽子屋も喜んでくれるかな。」

帽子屋の喜ぶ顔を見たくて、俺は家に帰るために急いだ。


「……?」

後ろからコツコツと足音が聞こえる。

俺は歩くスピードを少し上げるが、後ろからする足音も同じようにスピードが上がる。

(…つ、つけられてる!?)

俺は怖くなり走り出した。
つけてくる足音も一緒に走り出し、逃げようと頑張っても……無理だった。

「…っくそ。」

手を掴まれ、腕で首を絞められた。

「ッ…し…ゃ」

必死に声を出し俺は叫んだ。

「助け、て…帽子…屋ッ!!」


<後編に続く>
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