novel

□真夜中に眠る
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目が覚めたら、部屋はまだ暗かった。
隣で眠る彼を起こさないように、枕下のスマホを手に取る。
ディスプレイには、2:21の文字。
夜明けまではまだまだ長い。
ふと、彼を見る。
長いまつ毛に綺麗な横顔。
眠る姿すら、美しい。
そりゃアイドルも出来るわと納得してしまう。

「私で、よかったのかな…」

時々、不安になる。
アイドルだし、凄くモテるのに。
私より可愛い子なんて、この世界にたくさんいるというのに。
たまたま近くにいたのが私だったから、なんて。
夜はこういうことを考えてしまうから嫌いだ。

「ホント…嫌になる…」

気付けば頬が濡れていて。
止めようと思えば思うほど、その面積は広がっていく。

「っひぐ…」

口を抑えて、声を殺して。
それでも溢れる涙は、止まらない。

「なまえ…?」
「…っ!?」

嫌だ。
今は、見てほしくないのに。

「泣いてるの…?怖い夢でも見た?」
「ちが…、大丈夫、起こしてごめ…、」

慌てて涙を拭いていると、大介の大きな手が私の頭を自分へと引き寄せる。
その手はそのまま、小さい子をあやすように何度も滑る。
不思議とさっきまでの不安がすぅっと消えていった。

「大丈夫、俺がずっと傍にいるから」
「…ん」
「愛してるよ、なまえ」
「私も、大介」

彼のぬくもりを感じながら、気付けば夢の中へと堕ちていた。

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