novel

□進まない2人
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どうして、こうなったんだろう。
いつからこんな関係になったんだっけ。
気付けば私達は、求め合うだけの関係になっていた。

外は雨が降っている。
部屋に聞こえるのは私達の息遣いと、雨音だけ。
肌を滑る唇に身をよじりながら。
ああ、今日もこのまま。
この関係のまま、進まないんだと。

「なまえ余計なこと、考えてるでしょ」
「ふふ、辰哉くんにはお見通しだね」
「余裕そうだもん」
「そんなことないよ」

余裕なんて、あるわけないじゃない。
だって目の前に好きな人がいて。
その人に、抱かれて。

「じゃあ、なんも考えられないようにしよ」
「いじわるだ」
「俺に集中して欲しいだけ」

もうあなたのことしか考えてないよ、なんて。
口に出すには、勇気が足りない。
腰を打ち付けられる度に、甘い声が出て。
キスをされる度に、あなたを好きになっていって。
なんだかこの世界に、私達しかいないような気になってしまう。

「好きだよ」

その好きは、この関係がってことかな。
心地良いよね。
わかるよ。
でもね、私は欲張りだから。
もっとって。
あなたの特別になりたいって。
そう、強請ってしまうの。

「俺達相性良すぎじゃんね」
「セクハラ」
「なんでよ」

吐き出された欲はお腹を伝って、シーツを汚す。
酸素を欲する体を鎮めるように、ゆっくりを息を吸って。
ゆっくり、吐いて。

「ちゃんと食ってる?」
「食べてるよ」
「ホントに?細すぎるよ」

腰に這う手がくすぐったくて。
焦れったい。

「エッチ」
「はは、唆る」

落とされるキスは優しい。
ほらまた、あなたを好きになっていく。

「もっかいしよ」

そしてまた、私達の関係は変わらない。

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