□恩愛
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「まったく…」


いつも狙ってくるタイムセールの時間。
商品の場所を覚えるほど通い詰めているスーパー。
顔馴染みになりつつあるレジの店員。

そしていつもの場所では大、小の子供。
いや、違った…おてんば娘と只のマダオだった。


「…そんなに座りこむほど悩んだって買うお金はありませんからね」

「一個ぐらいはいいだろーがよォ〜…おっ、コレ新作のチョコ!」

「そうアル〜ダメガネで更にケチなんてモテないネ」

「どんだけ眼鏡馬鹿にしてんの!?って、入れてもダメだからねっ」

「よし、じゃ俺もこれぐらい良いよな」


「ちょ、コラ!いい加減にしろよお前らァァァ」



そんなやりとりはいつもの事で
チラチラと投げかけられる周囲の視線に負けじと交戦する。

これでも最初は気にしていたのだが
この二人相手に周りの目を気にしても得なんてない。
家計が苦しくなる一方だ。

お店の人には悪いけど少し乱雑に商品を戻す。


「やーめーろーやー!こんな幼い少女の願いを断るつもりアルか!」

「酢こんぶを買う時点で少女じゃないよね?そしてこんな大量な願いが聞けるかっ!」

「んじゃ、俺のは良いよな」

「ちょっ、なんでアンタのが良いんだよ!」


更にカゴに入れてくるのを阻止し、またリリース。
ごちゃごちゃと入れられていたお菓子類はキレイになくなった。



「 「 ちっ 」 」

「揃って舌打ちすんなァァ!こっちがしたいわ!!」


三人と一匹で生活していると良かれ悪かれ影響を受ける。
特に神楽ちゃんは銀さんのあらゆる所を吸収している気がする。

今の不貞腐れた顔なんてそっくりだ。
隣のマダオに比べたらまだ可愛いほうだけど。


「仕方ないアル。帰ったら工場長直々に洗濯物、畳んでやるヨ」

「神楽、てめぇ…ポイント稼ぎか」

「フン、平伏して感謝するよろし」

「もう…丁寧に畳んでよね、工場長」


彼女愛用の酢こんぶを2つ取るとカゴに入れてやる。

目の前では二人が言い争い、遂には手が出て足が出て
段々とエスカレートしている。


ほら、早く行きますよ。大の大人が恥ずかしいったら…


なんてぶちぶち小言をぶつけながら
先に一人でレジへ行く。

ドンと置いたカゴには
しっかりと新作のチョコも入っていて

なんだかんだ言いながらもこの二人にはとことん弱いんだ、と
ちょっぴり苦笑いを浮かべる。
そしていつもお財布の口を開けて、現実に引き戻されるのだけれど。


「さて、と…」

両手いっぱいの袋を持って、外に出る。
と、すぐに両側から伸びてきた手に袋を取られた。


「おっせぇぞ、ぱっつぁん。ほれ、帰るぞ〜」

「レディを待たすとは何事ネ、だから新八なんだヨ」


言うだけ言って早々に歩き出す二人の背中を見る。
ぶっきら棒だけど優しい二人。


結局の所、

みんながみんなに弱いのだ。



「ちょっと、待ってよ。銀さん、神楽ちゃーん!」


その優しさに甘えて、今日はお手伝いしてもらおうか。

そしてこき使った後のご褒美にお菓子を渡して、
こう言ってやろう。



お母さん口調で


   『 ふたりともよく頑張りました 』







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