□shower
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   shower...



・・・最悪だ

「どうしよう」


突然の雨


両手に買い物袋を持ちながら
新八は走っていた。

ようやくちょうど良い軒先を見つけて、さっと入る。


よかった、助かった


通り雨だと思うが、まだまだやみそうにない。
少しくらいなら雨宿りもいいかと荷物を降ろした。


おばちゃん連中にもみくちゃにされながらも
なんとか特売だった肉が買えた。

少し、幸せな気分で水溜りが出来るのを眺める。


浮かんでくるのは神楽と銀時の嬉しそうな顔。
まぁその後は…

肉争奪戦になってしまうのだろうけど。


ふふっ、と笑みが零れる。




「なぁに笑ってんだ、オメー」



いきなり上から聞きなれた声が降ってきた。


え、

と顔を上げるとそこには銀髪。


「そんなに雨宿りが楽しいんですか〜?」

「銀さん‥なんでここに?」


「迎えに来てやったんだよ、見てわかんねぇ?」


「で、でも銀さんこの間…」


「ほらっ早く入れよ。マジ早く帰んないとヤバイんだって!」


と言葉を遮り、無理矢理傘に入れながら
纏めていた買い物袋を取られる。


「え、どうかしたんすか?」

強引な態度に何かあったのかと心配になる。


早足で歩きながら、

「隠してた糖が神楽に見つかっちまって今、まさに食われてるの!」

俺のチョコがァァァ
と嘆く。


いい大人が菓子の心配かよ!


「へぇ、そうなんですか」

大食いの神楽だ、もうすでに全滅だろう。
そのほうがこの男のためになるが。



「どうでもよさげな顔だな、オイ」


「いや、てかアンタまた隠してたんですか!?」


「隠してなんかないよ?お菓子が勝手に歩いて戸棚に入ってったのを見つけてこの俺が保護してやってだな・・」

「そのお菓子が今度は神楽ちゃんの口に入ってったんだからいいじゃないですか。プラマイゼロでしょーが」


「良くねぇよ!今頃は神楽じゃなく俺の口に・・!」


「はいはい」


「はぁー・・せっかく迎えに来てやったのに冷たくない?」


「べっ、別に頼んでませんけど」


「酷っ!お礼にこれ…お菓子食べてくださいvってなんないワケ」

「なりませんね、糖尿一歩手前の人には」

「一歩進んで二歩下がるんだから買ってくれてもいいじゃねぇかよ」

「結局糖尿進んでんじゃん!」



ぁ、駄目だ

またいつもの調子になってしまった。


素直にお礼を言おうと思ってたのに…

わざわざ迎えにきてくれたのだ


ずっと前、雨が嫌いで外に出たくないと
渋っていた彼が。


しかも、僕のためにわざわざ。


そうではなく、
神楽ちゃんに暴れられるからとか
ご飯が遅くなるからかもしれない


けれど


  嬉しい



小声で呟く。


「…ありがとうございます」


そっと口から出た言葉は


強くなっていた雨音に掻き消され


彼に届いたかどうかは



わからなかった。





end.


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